仕事に効く教養としての世界史:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)
将来何が起こるか分からない今、何が起こっても大丈夫なように歴史を勉強しなければならない。人間は将来を見通す上で、過去からしか学べない動物であることは既に1500年以上前に唐の太宗、李世民が喝破している。
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この本はツイッターから生まれた
この本は僕の初めての歴史の本になりますが、実はSNS(ツイッタ―)から誕生したという面白い経緯があります。
数年前、20代の部下から「今日から毎日ツイッターでつぶやくように」と指示を受けました。「他の生保の社長はやりそうにないので差別化が図れるし、第一、お客さまと直接対話ができるというのはライフネット生命のマニフェストにもふさわしいと思いませんか」と、強制されたのです。確かに道理にかなっているので、ものぐさな僕も仕方なくツイッターを始めました。
数カ月後、母校京大に講義に行くことになりました。僕が歴史オタクであることを知っている京大の先生が、教養学部のグローバル・ヒストリーの講座に呼んでくださったのです。テーマはイスラム史でした。行きの新幹線の中で僕は「これから母校で講義をします!」とツイートしました。すると誰かが「保険論かベンチャー論、どちらですか」と。僕「いや、イスラム史です」するとまた誰かが「僕も聴きたいなぁ」さらに「私も聴きたいので2人で事務局やって出口さんを呼びましょうよ」とツイートが。僕「セットしてくださるなら喜んで行きますよ」と。このようなツイッター上の経緯(10分か20分)があって、イスラム史の講演会を若い2人が東京でセットしてくれたのです。
おかげで講演会は好評でした。主催者の2人「もっと歴史の話を聞きたいので、また企画してもいいですか」僕「いつでもどうぞ」。こうして、まさに瓢箪から駒のような形で、歴史の勉強会が始まりました。現在は「5000年の人間の歴史を4〜5年かけて勉強しよう」ということで年に3回ほどですが同じ主催者による勉強会を公募継続しています。この勉強会は京都、名古屋にも飛び火して、現在3ケ所で「5000年史」の講義を続けています。
そして、東京でこの勉強会にたまたま参加した編集者の方が「これは面白い」と思い、今回の世界史の本を作ることになりました。つまり僕が部下の言うことを聞かずにツイッターをやらなかったら、この本は生まれなかったのです。
僕の本の中では最も面白い本の1冊
アマゾンのカスタマーレビューを見ると、この本は僕の書いた本の中では一番賛否が分かれている本であることがわかります。「システム×デザイン思考で世界を変える」(慶應SDM著、日経BP社)を読むと、イノベーションの条件の1つとして「物議をかもすこと」が挙げられており、「賛否両論になりやすかったアイデア」を生かすことが推奨されています。半ば冗談ですが、この本は(小さな)物議をかもしている訳ですから、僕の本の中ではおそらく最も面白い本の1冊であることは間違いがないと思っています。
なぜ歴史を学ぶことが大切か
ところでなぜ僕が歴史を学ぶことを大切だと思っているか。それは、未来に何が起こるか分からない、何かが起こった時には上手く対応しないと生き残れない、上手く対応するためには過去の出来事(歴史)を学ぶしか方法がない、と考えているからに他なりません。リーマン危機のような出来事が将来起こった時、よりよく対応出来るのはどちらの企業でしょう。「リーマン危機の教訓を必死で勉強した企業」と「過去のことは参考にならないと思って何も勉強しなかった企業」。答えは火を見るより明らかではありませんか。人間が将来を見通す上で、過去からしか学べない動物であることは既に1500年以上前に唐の太宗、李世民が喝破している通りです。
「夫れ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正すべし。
古を以て鏡と為せば、以て興替を知るべし。
人を以て鏡と為せば、以て得失を明らかにすべし。
朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過ちを防ぐ。」
(出所:「貞観政要」)
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