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「問題解決のジレンマ」――「仕事ができるアリ」と「発想が豊かなキリギリス」は真逆の思考をするビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

「単に与えられた仕事をこなすだけではなく、自ら能動的に課題を発見していく力が求められる」というのは、昨今業界や職種を問わず言われている。ただしここには大きな落とし穴がある。それは、いままで重要視されていた「与えられた仕事を着実にこなす」ための価値観やスキルと「能動的に課題を発見する」ための価値観やスキルとは、180度相反するものだから。「発想が豊かになる」ためには、単に「これまで以上に頑張る」だけでなく、これまでの価値観を捨て去る必要がある。

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「問題発見」の重要性


問題解決のジレンマ: イグノランスマネジメント:無知の力

 ビジネスに必要なスキルが確実に変わってきています。

  • 「言われたことを着実にこなす」から「自ら能動的に問題を発見し、解決する」人材が欲しい
  • 「単なる物売り」だけでなく、「顧客視点に立った課題解決型」の営業活動をしたい
  • 「顧客のいいなり」ではなく、「真の顧客ニーズ」を先取りした提案をしたい
  • 「他社への対抗商品」ばかりでなく、「競合がない新商品」を出したい

 このような状況を一言で表現すれば、問題解決における重要なポイントが「下流から上流へ」シフトしているということです。仕事というのは、営業であれ企画であれ開発であれ、あるいは経理や人事の仕事であれ、まずは「そもそも何をしなければいけないのか?」という曖昧な状態から始まって、コンセプトや方向性が決まってからはどうやって具体化するかが明確になり、目に見える商品やサービスという形になっていくというプロセスを取ります。

 ここでいう、「何をやるかを決める」(What)までが上流、いわば問題の発見と定義で、「何をやるか」が決まった後で「どうやるか?」(How)を追求して実行するのが下流の仕事になります。つまり、広い意味で日々の仕事における問題解決というのは大きく上流の問題発見・定義のフェーズと下流の(狭義の)問題解決に分かれることになります。先のビジネス課題で言えば、重要性が(狭義の)問題解決から上流の問題発見にシフトしているということです。

最近ではAIやロボットの飛躍的な発達によって人間の仕事がロボットに奪われていくのではないかという議論が起こっていますが、どのような仕事からロボットに置き換わっていくのかと考えてみると、簡単に言えば、本稿でいう「下流の仕事から」置き換わっていくことは間違いないでしょう。

「上流」と「下流」に必要な価値観は相反する

 では、ここでいう仕事の「上流」と「下流」の違いについて整理しておきましょう。

 そもそも「上流」と「下流」という言葉を使っている理由のひとつは、大きな意味での「仕事の流れ」が「川の流れ」によく似ているからです。

 上流は「スピードが速い「激流」だが流量は少ない」のに対して、下流は「安定していてゆるやかだが流量は大きい」というのは、まさに組織でいうスタートアップと伝統的大企業の関係とよく似ています。

 また人材面は「川底の石」にたとえられます。上流では「尖って大きく個性的な形をした石」が多いのに対して下流に行けば「小粒で丸くなった砂」が多くなっていくというのもまさに組織の中の人材とよく似ていると云えるでしょう。

 このような上流と下流の仕事の性質は下図のように、さまざまな観点で対照的と言えます。


上流と下流の仕事の性質

 まとめれば、上流は不確実性が高く曖昧模糊として、個人に依存した仕事が多いのに対して、下流の仕事は定型的で標準化や分業が適した仕事ということになります。ポイントはこれらが、ある意味で「対極」の関係にあるということです。

 仕事の特性が正反対であるということは、求められる人材のスキルのみならず基本的な価値観も180度違うということです。例えば、下流に求められる人材は「80点を100点に」する人で、上流に求められる人材は「0点から20点を作れる人」といった違いです。

 そのために必要な価値観も「曖昧な仕事は受けてはいけない」(下流)vs. 「曖昧な仕事をさばくのが自分の仕事」(上流側)、「明確にできると分かったもの以外はやるべきではないので、実施前に十分検討と検証を重ねる」(下流側)vs.「多少分からなくてもまずはやってみてから考える」(上流側)といったように、相反するものとなります。

必要な人材は「アリ」から「キリギリス」へ

 このように、上流と下流で異なる人材を端的に表現すると「アリ型」と「キリギリス型」の違いと言えます。ここでいうアリとキリギリスの思考回路は3つの相違から成り立っています。

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