出入り禁止は1回の失敗からではなく負の習慣から起こる:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/3 ページ)
「出入り禁止」になる経験を通して、リーダーになれる人となれない人に分かれ。その分かれ目とは?
出入り禁止は、開拓した先輩と積み上げてきた先輩の信頼を吐き出させた
出入り禁止になった時、自分が「どれだけ大変な損失を与えたか」ということに気づかない人が多いのです。「自分は50社のお客さまを持っていて、そのうちの1社で起こっただけだ。また何かで取り返せばいい」と考えるからです。
実際に出入り禁止になった時に失ったものは、まずはその会社との取引を開拓した先輩社員の開拓までの努力です。お客さま1社を開拓するまで、どれだけのエネルギーを注いで信頼を築く必要があるかが分かっていません。
これが二流の人です。
二流の人は、今目の前にあるものを「簡単にそこにあった」「大昔からそこにあった」と思い込んでしまうのです。お客さまが大昔からそこにあるということはありえません。ゼロのところから、お客さまになってもらうためにずっとコツコツ頑張ってきて、やっとお客さまになってもらえたのです。お客さまになってもらったあとも、そのまま何もしなかったのではありません。継続的にコツコツ積み上げてきた先輩社員の日々の信頼の蓄積があります。
出入り禁止になることで、開拓の蓄積と継続していた蓄積の2つを吐き出させてしまったのです。お客さまも、急に出入り禁止にしたのではありません。「この営業マンは何か感じ悪いな」と思いながらも、ガマンにガマンを重ねていたのです。
これまで来ていた担当の人とのつき合いがあるので、その分のおつき合いの貯金を少しずつ相殺しながらガマンしてきて、その貯金がゼロになったということです。
金銭面の損失よりも、信頼を失うほうが重大なのです。この時に、二流の営業マンは金銭面のことだけを考えます。
私は新入社員の時に、営業部に頼まれて得意先の競合プレゼンに行きました。ところが、これは最初から通らないプレゼンなのです。いわゆる出来レースです。形だけプレゼンは受けて、本来通る会社はすでに決まっているのです。
その時に、二流の人は「なんだ、出来レースじゃないか」と言います。一流の人は「頑張ろう」と言います。ここで頑張るのは、先輩がプレゼンに参加させてもらうまでコツコツ営業努力をしてきた苦労を知っているからです。
駅伝で言うと、シード権がなく、予選会から参加するのと同じです。取引があるのは、シード権があるということです。予選から参加する時は、「今度から継続的にプレゼンに参加させよう」というインパクトを与えるいい企画を出そうと考えればいいのです。
「なんでこんなムダなプレゼンをさせるんだ」と思うのではありません。先輩がやっと切り拓いて、プレゼンに参加させてもらえるところまで漕ぎつけたのです。その先輩のコツコツに気づけた人は、「そこからさらに下がるようなことはしてはならない」と考えます。
金額に反映するのは、コツコツのあと、かなり先になってからです。そうしないと、先輩のコツコツを食いつぶしている自分に気づけません。金額は目に見えるからまだいいのです。
ところが、信頼は目に見えません。その信頼に気づけるのが一流の人です。目に見える金額に気づいても、目に見えない信頼のコツコツや積み上げに気づけない人は、二流なのです。
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