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<新連載>なぜ今、「イノベーション」が必要なのか?日本式イノベーションの起こし方(1/2 ページ)

スティーブ・ジョブズと日本企業の事例から紐解く組織の中からイノベーションを起こす方法。

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 唐突ですが質問です。10年位前の世の中になくて、今ごく普通にあるものを、できるだけ多くあげてみてください。商品・サービス、建物、企業・団体・組織、国家、概念・イデオロギー、アイドルなどなど、なんでも構いません。10分ほど集中して考えると、実に数多くのモノやコトが出てきます。スマホ、東京スカイツリー、水素自動車、ももいろクローバーZ、iPad、クマモン、北陸新幹線……。これらはイノベーションの一例です。

世界は変化に溢れている

 ポイントは3つです。1つ目が、その数の多さです。「10年ほど前に存在していなかった何か」は、とにかく数が多い。このイマジネーションを何人かのグループで行うと、すぐに100個以上になります。

 2つ目が、その経済成果の大きさです。経済成果というと堅いですね。乱暴にいうと儲かっているかどうかです。ゆるキャラで一躍有名になった「くまもん」も、10年ほど前には存在していませんでした。その経済効果を日本銀行の熊本支店が試算しています。なんと、2年間で1244億円です。同様に、「ふなっしー」は8000億円ともいわれています。

 この10年ほどで生まれた新しいモノやコトは、膨大な経済成果を上げているのです。そして最後がご自身の10年前です。皆さんはいったい何をしていましたか?おそらく、皆さんは何かしらの社会的活動をしていたと思います。ただ、ほとんどの人が、前述したイノベーションには関わっていなかったでしょう。

イノベーションとは、「経済成果をもたらす革新」

 イノベーションは数が多く、経済成果が膨大であり、必ず誰かが仕掛けている。企業の機能が、顧客・市場を創ること(マーケティング)と、新しい価値を創ること(イノベーション)である限り、イノベーションはどの時代にも必要とされます。それは、さまざまな外的環境の変化が急激に起きている現代には、なおさら求められていることです。

 では、イノベーションとはいったい何でしょうか? 私はイノベーションを、「経済成果をもたらす革新」と定義しています。社会の役に立つ新しいことであり、かつ経済成果を伴うものがイノベーションです。非連続なものや連続的・カイゼン的なものもあります。天才的な発明からおきるコトもあれば、日常の小さな工夫も経済成果をもたらします。では、イノベーションを起こすために、われわれはどうしたらいいのでしょうか?

300社を超す企業と議論し、気づいたこと。

 「どうすれば組織の中からイノベーションを起こすことができるのか?」私は日々自問自答しています。1986年にリクルートに入社して30年余りが経ちました。近年はイノベーション創出の研究及び事業開発をしています。リクルートマネジメントソリューションズ 組織行動研究所での「組織の中でのイノベーション創出研究」を皮切りに、さまざまな機会を通じて、数多くのイノベーターや経営者、経営企画部長、研究開発部長、人事部長と議論してきました。対話した企業数は300社を下りません。

 そこで、あることに気づきました。バブル崩壊後失われた20年に、実際に着実にイノベーションを興している日本企業や団体・組織があること。そのイノベーションは、アップルでのスティーブ・ジョブズのような、キラ星のごとく輝くイノベーターが主導したようなものではないこと。

 どちらかというと、日本式の地味な組織の中での交流を通じておきたものであること。イノベーターたちは、少し変わり者に見えること。イノベーションを起こす過程で、イノベーション・マネージャとでもいうべき支援者が必ず存在していること。そこには独特の組織や制度などの支援があったこと。経営者も変革に本気で行動したこと……などです。

 組織の中からイノベーションを起こす日本式の作法があるのではないか? それは、難しいものではないのではないか? 援用しまねをすることができるのではないか? もしかしたらジョブズが率いるアップルでも、似たようなことを行っていたのではないか? 多くのイノベーションに携わる人たちと話すうちに湧いてきたこのような疑問を、4つのポイントにまとめることができました。

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