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<新連載>なぜ今、「イノベーション」が必要なのか?日本式イノベーションの起こし方(2/2 ページ)

スティーブ・ジョブズと日本企業の事例から紐解く組織の中からイノベーションを起こす方法。

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日本式のイノベーション創出、4つのポイント

(1)イノベーターはエリート社員ではなく、「ヨソ者」「バカ者」「若者」。

 先ず必要なのは、イノベーターです。イノベーターは決してエリート社員ではありません。「ヨソ者」、「バカ者」、「若者」はイノベーターのキーワードです。彼らに共通して見られるのが、おどろおどろしい「情念」と「行動」です。イノベーションを起こすとき、さまざまな局面で有形無形の抵抗や圧力に遭遇します。そんなとき、自分が思いつき考え抜いたイノベーションを、誰に何を言われようとやる、徹底して前に進める、最後は関係者を根負けさせる、といった情念と行動がイノベーターには不可欠です。

(2)部下のイノベーションを成功に導く、「ノリ」「盛り上げる」」上司が必要。

 イノベーションはイノベーターの個人的で独善的な思いや行動から始まることがほとんどです。「どうしても必要」「あったらいいな」「困っている人を救える」・・・。イノベーションの基点となる「不」は人々に根ざしていて、それに気づくのはあくまでも個人です。しかし、個人の頭脳の中で「不」の解消を磨き切ったとしても、イノベーションはおきません。異なる観点やものの見方をする人たちが、アイデアに「ノリ」、「共感」し、ときには現実を突きつけることが求められます。イノベーションをマネジメントする人です。このマネージャの力を借りて、イノベーションが磨かれ、社会に普及・波及していくのです。

(3)イノベーションを起こす組織のポイントは、「プロセス」「資源」「認知・称賛」。

 「情念」で「行動」するイノベーターと、彼らに「ノリ」「盛り上げる」マネージャが、イノベーションを興すために、組織側がしなければいけないことがあります。イノベーションが湧きおこり磨かれる「プロセス」をつくり、「資源」を投下し、イノベーションに対して「認知・称賛」を続けることです。「プロセス」とは、場と解釈しても構いません。通常の事業推進とは異なる場を用意し、そこに「資源」すなわち経営資源を投入します。イノベーションが少しでも前に進んだら、「認知・称賛」を絶やさない。それには、組織の力が必要です。手当てし、補強し、支援する。人事制度などで社員の行動を促すのもいいでしょう。

(4)経営者は「慣行の外」に出る

 締めは経営者です。組織の中からイノベーションを起こすためには、事業の最終責任者である経営者が「慣行の外」に出なければいけません。「慣行」とは、企業の事業推進に関わる全てのことです。具体的には理念やビジョン、戦略や方針、意志決定の基準や人事制度、情報システムなどの仕組み、それらに基づく行動、関係するお客さまやパートナー企業、工場や販売拠点・代理店、コミュニケーション自体、そして商品やサービスそのものも慣行といえます。つまり、事業そのものが慣行なのです。経営者自らがさまざまな「慣行の外」に出て、イノベーターやマネージャを支援することが必要なのです。

 実はわれわれも驚いたのですが、これらはジョブズ自身と、彼がつくりあげたアップルにあてはまることばかりなのです。「イノベーションが次々に湧き起こるアップルのような組織は、ジョブズなくてもつくれる。しかも日本式で」こう主張したいところです。次回以降、上記(1)〜(4)を、順を追って考察していきます。自ら変化を創りだし、ビジネスのブレークスルーを生み出し、組織の中からイノベーションを起こそうではありませんか。

著者プロフィール:井上 功(こう)

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブプランナー

1986年リクルート入社、企業の採用支援、組織活性化業務に従事。2001年、HCソリューショングループの立ち上げを実施。以来11年間、リクルートで人と組織の領域のコンサルティングに携わる。2012年より現職。イノベーション支援領域では、イノベーション人材の可視化、人材開発、組織開発、経営指標づくり、組織文化の可視化などに取り組む。

著書:「リクルートの現場力」、「なぜエリート社員がリーダーになると、イノベーションは失敗するのか」(ダイヤモンド社)


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