一流と二流の違いは、ほんのちょっとした差:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
お客さまから引っ張りだこになる人は何が違うのか? 誰もができる簡単なことだけど、多くの人が知らないルールとは。
二流は、「暑いですね」から入り、一流は、「何」と言う?
初対面の時、まずは心の扉を開いてもらわねばなりません。多くの営業マンは、さしあたり天気の話をしますが、相手の警戒心を説くには足りません。警戒心を解くには、「褒めどころを褒める」のが一番。
「褒めどころ」とは、相手にとって大切にしている「こと」や「もの」、もしくは「考え」。
例えば、「しっぽが、かわいいワンちゃんですね。なかなか、いませんよ」と言われて、「うるせえ」と思う飼い主はいないでしょう。商談の冒頭で「褒めどころ」を褒めると、警戒心が一瞬にして解けます。
こんな感じ。
「ありがとうございます。お会いできて嬉しいです。受付のご対応に感動しました。いろいろな会社に伺いますが、なかなかないです。」お客さまは、こう思うことでしょう。「えっ、そうかな?」と。警戒心が、解けた瞬間です。
もちろん、心にも無いことを言う必要はありません。お世辞はスグに分かります。些細なことにも「関心」を持つことはできます。関心を持つのは、才能ではなく、行動。必ずできます。
一流は、「なかなか、ない」と関心を示す
「今はいらない」と言われた時、二流は、「あきらめ」、一流は、「何」と言う?
「別に、今はいいかな」なかなかお客さまの本心を聞き出せない時があります。とっておきの方法を紹介します。それが、「点数」で聞く方法です。嫌味なくグッと踏み込んだヒアリングができます。
「今のお車でお困りのことはございますか?」
「う〜ん……今は大丈夫かな。特にトラブルもないしね……」
「それは、すてきですね。1つだけ、お伺いしてもよろしいでしょうか?
もし、今のお車に点数を10点満点でつけるとしたら何点でしょうか?」
「そうだね……。え〜、8点かな」
「あと2点は、どんなことがあれば良いとお考えですか?」
「そうだね〜……。燃費かな。リッター7キロなんだよね」
「と、おっしゃいますと」
「来月に生まれるの。子供が。お金がかかるからさ。」
「それは、おめでとうございます!」
最初は「大丈夫」と答えていたお客さまでしたが、「燃費に不満を感じている」ことをキャッチすることができました。このように、「点数」で聞くだけで、隠れたニーズをあぶりだすことができるようになります。
一流は、「10点満点では?」とクイズにする
プレゼンの時、二流は「あの人も使っている」と説得し、一流は、「何」と言う?
プレゼンとは「説得」をすることではなく、「納得」を得るための行為。ここを忘れてはなりません。とっておきの提案法、それが「選択肢」を示す方法です。
A案は、リーズナブルな案。B案は、あなたがベストだと考える本命案。そして、次の流れで提案します。
「A案メリット」→「A案デメリット」→「B案デメリット」→「B案メリット」の順に伝えます。やってみましょう。
【例:リフォーム営業の場合】
1つは、「知人にお願いする」方法(A案)。もう1つは、「複数の専門業者の中から選ぶ」方法です(B案)。
「A案は知人の紹介なので安心できます。一方、複数から選べない点が残ります。B案は、確かに少し面倒です。しかし、複数から選べるので納得感を得られます。目的を考慮されると、どちらがお考えに近いですか。」
いかがでしょう。B案を選んでもらえるように感じませんか。このように選択肢を示すことで、納得できる決定をしてもらえます。
一流は、「選択肢」を示す
さて、まとめます。一流の営業マンが実践するひとつひとつのルールを紹介しました。私は、商品を売る前に、自分を売ることこそが大事だと考えます。冒頭でも言いましたが、ほとんどは「スキル」というより「知っているかどうか」だけのことも少なくありません。まだまだ、営業を面白くすることはできる、そう思っていただけたら本望です。
著者プロフィール:伊庭正康
1969年京都生まれ。1991年リクルートグループ入社(求人情報事業)。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。
その後は、リクルート社においてプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞、また累計表彰回数は40回以上の社内表彰を受け、営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。リクルート流の「圧倒的な当事者意識」を持つ、組織作り、営業マン育成法を会得。
2011年、研修会社(株)らしさラボを設立。リクルートで学んだ「圧倒的な当事者意識」を持つことの大切さを説くべく、年間200回を超えるセッション(営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演)を行っている。リピート率は95%。
また、ストレスコーピングコーチとして、ビジネスパーソンのメンタルタフネス強化の支援も行っている。近著には、『絶対に残業しない人の時短(しごと)のワザ』『強いチームをつくる!リーダーの心得』など多数。その活動は、日本経済新聞、日経ビジネス、など多数のメディアでも紹介される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新・上司力は、女性活躍だけではない
- 近づけ過ぎず、遠ざけ過ぎない距離の取り方
- 起業するならもっと数字で考えなきゃ!――黒字起業家になる52の言葉
- 年収の伸びしろを広げたいなら「オンとオフ」を180度変えよう
- その会議、1回100万円です!
- 決断の心理学――何かを変えるか、現状維持か
- 「間違いだらけのビジネス戦略」が読み解く2015年のビジネス・シーン
- 「NOと言われない営業」が世に存在していいのか?
- 「上司の9割は部下の成長に無関心」時代に人を育てる3つの鍵
- ほめるな、叱るな、教えるな
- 売上アップと、優秀なリーダー育成を同時に達成する「全員営業」マネジメント
- 男の年収は「見た目」で決まる――コンディションを高める2ステップ
- 40歳を超えて不安な健康 でも、時間がない、酒も飲みたい人の抜け道
- なぜ、うちの会社はうまくいかないのか?――組織とあなたを支配する8つの基準
- チームからイノベーションを生むビジネスマネージャーになるため、デザイン思考から学べること
- 21世紀のビジネスに大事なのは「モノ」より「共感」――10年後も生き残るための4つの考え方
- ネクタイを毎月3本買う人はなぜスゴイ仕事ができるのか?
- もしもあなたが新規事業の担当になってしまったら
- 「マネジメント・スタイル」が最強のチームをつくる
- アリストテレス流リーダーシップ論哲学
- 出入り禁止は1回の失敗からではなく負の習慣から起こる
- 2%のエース思考 “The approaches of the top 2%”――あなたはいつまで「同期」の中に埋もれているのか?
- リーダーに必須の人間力──信頼され未来を決める力
- なぜ文章力があるとビジネスは成功するのか?
- 一流の人は、悪口を言わずミーハーになる
- 「任せ方の教科書」〜部下を動かし成果を上げる「任せ方」とは〜