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30年目の真実
気がつけば早いもので、今年で社会に出て30年になります。新卒で入社したリクルートの新人時代は、社内で50代といえば役員くらいしかいなかったために、非常に遠い存在という印象でしたが、とうとう自分がその年代になってしまいました。
この30年間、それはそれは多くのビジネスパーソンと会い、20年以上を人材開発の仕事に費やしてきたために、それぞれがその10年後、20年後、30年後にどうなっていったかという知見がどんどん蓄積されてしまいました。
それはハッピーエンドストーリーからはほど遠い、不条理な真実としかいいようがありません。なぜなら、同じ能力、同じ年齢にもかかわらず、10年、20年でますます差が開き、30年後には「なぜこんなに差がでるのか」という驚きしかないからです。
多くの先人たちはそれを「運」と表現しましたが、それだけで片づけられてしまうのも釈然としないため、「できる人」たちのそれまでの行動様式をつぶさに分析しました。そこで浮き彫りにされたのは、「できる人」と周りから評価されるようになった人が持つ共通点です。
具体的には8つで、スキルや力と表現できますが、ここではあえて力として紹介します。
「できる人」は8つの力、すなわち「稼ぐ力」「交渉力」「時間力」「話す力」「書く力」「学ぶ力」「決断力」「失敗力」で他とは違っていました。「できる人は『5分』にこだわる!」という文庫本はその8つのスキルを細かく紹介したものですが、自身の自己チェックに使用しするのはもちろん、部下や後輩の育成のためにも生かしてほしいと思います。
今回はその中から「書く力」の1項目、資料作成に関して紹介します。
いい資料は「結論が3秒で分かる」
あなたは「読ませない資料」が「いい資料」だといわれたら、どんな資料を思い浮かべますか。「読ませない資料」とは、数字や図表、グラフ、写真といったビジュアルが盛り込まれた資料、つまり「結論が3秒で分かる資料」のことです。文字ばかりの資料とくらべ、「相手に伝わる」という点で圧倒的に優れています。数字、図表、ビジュアルが有効に使われていると意識的に文章を読んで理解しようとしなくても、感覚的に理解できるのです。
リクルートでの新人時代、当時天才営業マンといわれたIさんから「資料作成」の奥義を伝授された瞬間を今でも覚えています。その奥義は、経営者向けの資料は「1枚」にまとめた上で、必ず「数字」的根拠を盛り込めということでした。
時間のない経営者はそもそも分厚い資料なんて読まないし、判断するのが仕事なので、ジャッジできるだけの情報を簡潔にまとめ、意思決定の決め手となる「数字」的根拠がキモになるとうわけです。数字というのは、費用対効果、コストダウン額、イニシャルコストと回収期間、スペック、KPI(Key Performance Indicators)などが代表的なものになります。
Iさんのいう「数字」的根拠というのは、何も経営者に対してだけではなく、万人に共通する普遍的事実に違いありません。文字による定性的な表現よりも数字やデータによる定量的な表現のほうが、分かりやすさという点では優れているということを理解しておきましょう。しかしながら、だからといって数字ばかりを多くしてはいけません。数字だらけの資料というものは逆に見づらく、訴求力を著しく落としてしまいますので、バランスには注意して下さい。
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