カネカの「かつら」がアフリカでトップシェアを獲得している理由:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/3 ページ)
化学メーカーのカネカは頭髪装飾品分野において世界で大きなシェアを誇る。特にアフリカ地域ではブランド認知度も高い。なぜカネカの商品は支持されるのだろうか。
マーケットが約10倍も拡大
大薗: マーケットを発掘しただけでなく、育成もしていきました。どのくらいの成長があったのでしょうか?
天知: アフリカに進出して30年以上経ちますが、20年目あたりの2003年からマーケットが急激に大きくなりました。現在はそのころから比べて10倍ほどに拡大しました。
背景にあるのは資源バブルです。資源バブルを追い風にお金が流れ込んで、経済全体が活性化しました。
その過程において、2008年にリーマンショックがあったのですが、アフリカはあまり影響を受けなかったので、さらに攻勢を強めてブランドプロモーションに力を入れました。例えば、スタイリングコンテストを開催したり、テレビやラジオのCMを流したりして、カネカロンのブランド認知を高めていきました。
大薗: 2003年以前はどうだったのでしょうか?
天知: 実は伸び悩んでいたため、マーケットに対してほとんど手を打てない状況でした。社内ではアフリカから撤退したらどうだという意見もありました。それでも地道に商品開発を続けて、パートナーの工場に提案する活動を続けていました。それがアフリカの経済発展を追い風に結実したと言えます。
それと将来を見据えたとき、アフリカが巨大なマーケットになることは明白でした。当時の人口は8億人で、2050年には15〜17億人ほどになると言われていました。マーケットの成長に確信を持っていたのも大きかったです。
大薗: 最後に、素材メーカーとしてユニークであり続けるための要諦について教えてください。
天知: 我々は製品工場を自身で経営して、事業を拡大していくという道は選びませんでした。カネカの強みとして、素材提供にとどまらず、自社で繊維加工し、最終商品の開発まで提案できるという点を生かして、パートナーと協業する道を選びました。この強みをマーケットで継続して役立てることに尽きると思います。
大薗: 自動車部品メーカーのボッシュはクルマの組み立てまで可能だと言いますが、カネカも同じで、メーカーや美容師の仕事までも理解しているからこそ、最終商品の提案ができ、それが価値創造につながっているのですね。本日はありがとうございました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 告白方法もアドバイス 成婚率5割を超える婚活サービスが急成長しているわけ
2000年に日本初のインターネット結婚情報サービスを開始したのを皮切りに、現在では包括的な婚活支援サービスを提供しているIBJ。会員の成婚率は5割超えという、業界でも高い数字を誇っている。そんな同社の取り組みを石坂社長に聞いた。 - 初志を貫く! 広告で収益を上げない東京糸井重里事務所
Web広告収入という選択をせずに、主にオリジナル商品の販売で年間28億円の売り上げを達成している東京糸井重里事務所。その事業戦略について、同社CFOの篠田氏と一橋大学大学院の大薗教授が対談した。 - 「今までの延長線上では不可能」 ファスナーの雄・YKKが挑むビジネス変革
世界約70カ国・地域に拠点を構えるYKKは、顧客の細かな要求・要望に対してスピーディーかつ高品質な商品を提供することで、現在の規模にまでビジネス成長してきた。しかし、将来を見据えたとき、取り組むべき事柄はまだまだ多いという。 - カカクコムの徹底した「ユーザー本位」、その鍵は情熱ある“オタク社員”にあった
価格比較サイトの先駆けとして90年代末に登場した「価格.com」は、いまや月間8億7000万ページビューという巨大サービスに成長した。その成長の裏側には一体何があったのだろうか。カカクコム・田中社長が語った。