カネカの「かつら」がアフリカでトップシェアを獲得している理由:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(2/3 ページ)
化学メーカーのカネカは頭髪装飾品分野において世界で大きなシェアを誇る。特にアフリカ地域ではブランド認知度も高い。なぜカネカの商品は支持されるのだろうか。
パートナーと現地化を推進
大薗: さて、そこから80年代に入り、アフリカに新たなマーケットを築いていくわけです。そもそもの発端は、米国の卸市場にウィッグを買い付けに来たアフリカの方をカネカの営業マンが見掛けて、その後を追いかけて話を聞いたところからだそうですね。このような行動を取ったというのは、その営業マンが特別だったのか、それとも企業風土なのでしょうか?
天知: 両方でしょうね。企業風土としては現場主義を大切にしていますし、何よりもアフリカで頭髪装飾品が売れているかもしれないという情報に対して食らい付いてやろうという意識はあったと思います。
大薗: それが見事に花開いて、今ではアフリカで大きなシェアを取っています。カネカがユニークなのは、あくまで企業として行っているのは繊維の提供ですが、その先のウィッグを仕立てるメーカー、現地のパートナー工場や流通企業、消費者の頭にセットする美容師などに働きかけて、この産業バリューチェーンが健全に発展するよう支援されていることです。
一方でお伺いしたいのは、なぜアジアにあるウィッグメーカーの工場からアフリカに商品を輸出せず、現地に工場を建ててもらう手段を選んだのでしょうか。コスト的には高くつくのではないでしょうか?
天知: やはり消費者のいるマーケットで生産したいという「地産地消」の考え方があったからです。最初はいろいろな投資が必要で、コスト面での課題はありました。ただし、パートナーである韓国の頭髪装飾メーカーも海外に打って出ることにアグレッシブだったのと、現地の政府からも結果的にインセンティブを引き出せたことが大きいです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 告白方法もアドバイス 成婚率5割を超える婚活サービスが急成長しているわけ
2000年に日本初のインターネット結婚情報サービスを開始したのを皮切りに、現在では包括的な婚活支援サービスを提供しているIBJ。会員の成婚率は5割超えという、業界でも高い数字を誇っている。そんな同社の取り組みを石坂社長に聞いた。 - 初志を貫く! 広告で収益を上げない東京糸井重里事務所
Web広告収入という選択をせずに、主にオリジナル商品の販売で年間28億円の売り上げを達成している東京糸井重里事務所。その事業戦略について、同社CFOの篠田氏と一橋大学大学院の大薗教授が対談した。 - 「今までの延長線上では不可能」 ファスナーの雄・YKKが挑むビジネス変革
世界約70カ国・地域に拠点を構えるYKKは、顧客の細かな要求・要望に対してスピーディーかつ高品質な商品を提供することで、現在の規模にまでビジネス成長してきた。しかし、将来を見据えたとき、取り組むべき事柄はまだまだ多いという。 - カカクコムの徹底した「ユーザー本位」、その鍵は情熱ある“オタク社員”にあった
価格比較サイトの先駆けとして90年代末に登場した「価格.com」は、いまや月間8億7000万ページビューという巨大サービスに成長した。その成長の裏側には一体何があったのだろうか。カカクコム・田中社長が語った。