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中川政七商店が考える、日本の工芸が100年先も生き残る道とは?ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(3/5 ページ)

全国各地の工芸品を扱う雑貨屋「中川政七商店」が人気だ。創業300年の同社がユニークなのは、メーカーとしてだけでなく、小売・流通、そして他の工芸メーカーのコンサルティングにまで事業領域を広げて成功している点である。取り組みを中川淳社長が語った。

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当たり前の「経営」ができていない

大薗: コンサルティングサービスについても教えてください。今、多くの工芸メーカーが抱えている典型的な問題とは何ですか?

中川: 長らく地方の工芸メーカーに対する行政の支援を見てきました。支援内容でありがちなのは、有名なデザイナーが派遣されて、そこでモノを作るという取り組みですが、これによって会社が立ち直ったという例はほとんどありません。

 なぜかと言うと、問題の本質はそこにはないからです。問題の本質は、工芸メーカーに「経営」がないことです。流れに身を任せて、その日暮らしでやっているのが実態です。

 そうなってしまった理由は構造的な問題です。元々、産地問屋というのがあって、問屋の下にいくつもの工房がぶら下がっている状態でした。それぞれの工房が独立した会社の形は取っているけど、一製造部門にすぎないのです。問屋からオーダーが届いて、スケジュール通りに製品を納めることだけが彼らの仕事でした。けれども、あるときから問屋が機能しなくなって、突然自分たちで経営をしなくてはならない事態に陥ったのです。

 そうした彼らに対して、僕らがやってきたコンサルティングサービスというのは、いわば経営の家庭教師みたいなものです。モノが売れる、売れないというのは顧客ありきなので難しい面も多いけれども、経営を良くすれば必ず効果は出ます。まずはそこをきちんとやろうということです。予算表を作るなど当たり前の経営をして、その上で新しいブランドや商品を作ったり、流通をきちんとフォローしたりすればいいのです。

 僕らもメーカーなので、メーカーがやらなくてはならないことは全部やってきたし、メーカーは何が嬉しくて、何が嫌かよく知っているからお手伝いできるのです。実際、当社も以前は当たり前の経営ができていませんでした。例えば、Aという商品が売れているのに、なぜかどんどん製造されるのはBという商品だけ。理由を聞くと「作りやすいから」という答えが返ってくるようなレベルだったのです。

一橋ICSの大薗恵美教授
一橋ICSの大薗恵美教授

大薗: 工芸メーカーへのコンサルティングはうまくいっていますか?

中川: 今のところは全てうまくいっています。

大薗: それはなぜですか? うまくいきそうな会社を選んでいるのですか?

中川: いや、選んではいません。なぜ選ばないのかというと、中川政七商店自身も製造技術などで何の特徴もない中でやってきているから、他社も特殊な技術がなくても絶対にうまくやれると思っています。

 ただ、選ぶことはないですが、いくつか手を引かせてもらった案件はあります。先ほどもお話したように、経営の家庭教師だと思っているので、僕らの言ったことを必ずやってもらわないといけません。そこに関しては相手に選択権はありません。けれども、実際にはやってくれない会社もあったので、降ろさせてもらうことにしました。

大薗: 早い会社だと成果が出るのはどれくらいでしょう?

中川: コンサルティング支援に入って、多くの場合、まずは売り上げを伸ばすためにブランド作るわけですが、1年以内には商品リリースまで持っていけます。そこからすぐに売り上げが出るパターンもあれば、じわじわ伸びていくパターンもありますが、3期後くらいにはほとんどの会社が成果を出しています。

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