廃止寸前から人気路線に復活した「五能線」 再生のカギは“全員野球”の組織:地方創生のヒントがここにある(1/3 ページ)
観光列車ブームの火付け役となった「五能線」――。実はもともと廃止寸前の赤字路線だった。五能線を観光路線として復活させたJR秋田支社の取り組みから、地方企業活性化のヒントを探る。
JR西日本の「みすゞ潮彩」(山陰本線)、JR四国の「伊予灘ものがたり」(予讃本線)、JR九州の「指宿のたまて箱」(指宿枕崎線)――日本各地を走り回る観光列車。その数は100を超えており、観光客から人気を集めている。近年は「ななつ星in九州」などの豪華列車も登場し、特に盛り上がりを見せている。
そんな観光列車ビジネスの先駆けとなったのが、今年で開通80周年を迎えた秋田県〜青森県をつなぐ「五能線」である。大きな窓から季節ごとに異なる沿線の絶景を楽しめる「リゾートしらかみ」が話題を呼び、「日本で一番乗りたいローカル線」(2014年、楽天トラベル「旅行好きが選ぶ! おすすめのローカル列車ランキング」)と評価されるほどの人気ぶりだ。
廃止寸前だった五能線
実は、もともと五能線は赤字路線であり、観光列車が運行する前は廃止も検討されていた。
五能線に観光列車が走り始めたのは1990年。人口流出によって利用者が減少し続け、窮地に追いやられていた五能線の復活を賭け、当時のJR秋田支社は列車の窓から見える絶景を生かした観光路線に転換した。
当時は、広いエリアを走る路線を観光の目玉として売り出す前例はなく、県を跨ぎ13もの市町村が連携して取り組む販売促進も前代未聞。当然その改革は容易ではなく、すぐに成果につながることはなかったが、地道に努力を積み重ねてきた結果、今では年間10万人以上の観光客が「リゾートしらかみ」に乗車するほどの人気を博し「奇跡のローカル線」と言われるまでになった。
2016年7月28日、そのJR秋田支社の奮闘を取材した『五能線物語』が出版された。著者のローランド・ベルガー日本法人会長、遠藤功氏によれば「五能線の復活劇には、日本の地方企業の再生、地方創生のヒントが隠されている」という。
五能線の事例から地方企業はどんなことを学べるのか、そのポイントを遠藤氏に聞いた。
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