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インダストリー 4.0 における「つながるビジネスモデル」 の重要性 ――商用車におけるリマニファクチャリング事例視点(2/3 ページ)

つながるビジネスモデルとは何かについてを商用車市場でのリマニファクチャリングを事例として紹介する。

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Roland Berger

 更に、顧客はリマニを活用することで車両の修理にかかる時間であるダウンタイムを最小限に抑えている。エンジンのような大型部品の場合、商用車メーカーとしてたくさんの在庫を用意していない。不良在庫になる可能性を考えると大きさがかさばり、また単価も高い新品のエンジンをVolvoも正規販売店も抱えたがらない。

 特に顧客が独立系に逃げる可能性が高い状況であればなおさらだ。この場合、顧客の車両が故障して正規販売店に持ち込まれたとしても、新品のエンジンを受注生産する、高い輸送費を払って他店から取り寄せる必要があるなど、最悪の場合数ヶ月間車両が使えない状況が生まれる。顧客にとってこのダウンタイムは死活問題であり、最小限に留めたい。

 新品のエンジンだと上記の理由で在庫を常備しておくのは難しいが、リマニ部品であればこれが可能になる。正規販売店は数個のリマニ済みのエンジンを在庫保有しておき、顧客の車両のエンジンをリマニ部品で交換した際に、壊れたエンジンを次のリマニ部品候補であるコアとして回収するのである。つまり販売店は多少の在庫負担はあるもの、在庫数を一定に保ちやすい環境の中で、顧客のダウンタイムを最小限に抑えることができる。このようにリマニを活用することで顧客とのつながりを強化している。

つながる(2)パートナーを「巻き込む」

 リマニの実現には、リマニ部品を顧客へ届けるまでに係わるパートナーとの連携が不可欠だ。Volvoはこの連携のあり方を改め、パートナーを巻き込むことでリマニをうまく動かしている。 いくつかの例を紹介したい。

 まず、リマニ部品は顧客から回収した部品であるコアをベースにしているため、正規販売店が顧客の車両からコアを回収し、生産拠点(実際にはコアの再生を担当するVolvoのリマニセンター)に戻す流れを導入している。したがって正規販売店は車両を販売して整備する役割だけでなく、顧客からコアを回収するという役割を持っている。この回収業務はこれまでとは異なる大切な業務だ。

 正しいコアを回収するからには部品の状態を目利きする能力が必要だ。もちろん部品を送ったリマニセンターで最終的に状態を見て再生可能かを判断するが、販売店での初期判断に基づき極力再生不可能な部品を送らないことで、大きく重いエンジンの無駄な送料をかけずに済む。

 また、エンジンといっても排気量や環境規制対応状況などによって複数の種類があることから、なるべくVolvo全体としてほしいタイプのコアを回収することが望まれる。これまでの顧客管理に加え、顧客の車両のコアのタイプまで踏み込んだ管理することで、コアを回収する車両やタイミングを決めて実行していく必要がある。

 顧客の車両の定期メンテナンス実施時に、本当は交換の必要性はないが、コアの在庫調整のためにあえてコアを回収するという判断も行う(回収することは顧客の同意を得ている)。したがってコア回収業務は販売店の重要な経営指標で管理されている。

 もうひとつの例は部品サプライヤとの連携だ。 エンジンはVolvoが独自に設計・生産しているため、Volvoが直接リマニを手がけているが、Volvoが部品サプライヤから購入している部品(例:エンジン補助部品であるオルタネーターやトランスミッション)に関しては、部品サプライヤがリマニを行う。しかし、部品サプライヤは顧客と直接の接点を持っていないため、コアの回収・販売ができない。

 そこで Volvoは正規代理店にサプライヤの部品も含めたコアを回収させている。 回収した部品は無料で部品サプライヤに引き渡し、部品サプライヤが再生したあとにVolvoの正規代理店が販売・装着している。Volvoは無料で回収したコアを部品サプライヤに渡して部品サプライヤのリマニ活動を助けることで、リマニ対応品をエンジン以外にも広げ、顧客への価値提供を最大化している。

 たった2つの例ではあるが、これまでのような左から右に流れるバリューチェーンで表現される一方通行的なつながりだけでなく、パートナーとしてそれぞれが持つ強みを連携させ巻き込むことで、より大きな価値を提供できる仕組みをリマニは実現している。(図B参照)


図B:リマニファクチャリング事業構造

つながる(3)付加価値の「連鎖」を生み出す

 リマニにより実現された三つ目のつながるは付加価値の連鎖だ。リマニ部品は低価格 ・ 新品同等品質という価値を顧客に提供するだけでなく、ダウンタイム低減という価値提供にもつながっていることはすでに述べた。この他にも複数の価値の連鎖を生み出している。

 一番分かり易いのは、様々なコスト低減だ。リマニで回収したコアは情報の宝庫だ。 磨耗・破損しやすい箇所などがナマの状態でわかる。 顧客の車両の使い方に関する情報と組み合わせれば、磨耗や破損の理由を特定するきっかけになる。 このような因果関係の理解が進むと部品の交換対象やタイミングを予想することができ、またリマニ部品の在庫量を適正化することができる。

 更に回収したコアから得られた情報は Volvoの開発部隊に適宜フィードバックされ、次の開発に活用されている。 壊れにくい設計や磨耗に耐えられる厚さなどを設計に反映している。 結果として部品の寿命が延びるため、保証期間中の故障リスクを最小限に抑えることができる(または、保証内容や期間をより充実した内容にして顧客へ還元)。

 現在Volvoの主要部品は、複数のリマニに耐えられる設計になっており、コア回収は1回ではなく数回(Volvoでは最大 4回)行われ再利用される。 複数回リマニが行われ販売することで、結果として原価を大幅に抑えることにも成功している(リマニ対応にするために初期製造時の原価は高めだが、複数回リマニ部品として販売することで一回あたりの販売に換算した場合の原価は低くなる)。

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