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Logistics 4.0時代の物流ビジネス視点(1/4 ページ)

Logistics 4.0 は、物流をボーダレス化し、競争環境が劇的に変容する。新しいビジネスモデルを構築することで、この変化を次なる成長の契機とすることが求めらている。

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Roland Berger

 Logistics 4.0とは、IoTの進化により実現化しつつある物流の新たなイノベーションである。「省人化」と「標準化」が大きく進むことで、「運ぶ」、「保管する」、「梱包する」、「手配する」といった物流の基本オペレーションは装置産業化するはずだ。Logistics 4.0時代に勝ち残るためには、「特定の利用運送サービスでデファクトとなる」、「特定業界のサプライチェーン全体をカバーする」、「物流+αの価値を提供する」、「物流アセットを提供する」のいずれかの戦略を選択することが基軸となる。

 Logistics 4.0は、物流をボーダレス化する。トラックメーカー、マテハンメーカー、物流不動産会社、EC事業者といった、物流会社からすれば装置の調達先や荷主だったプレイヤーが物流サービスをも提供するようになる。競争環境が劇的に変容するのだ。新しいビジネスモデルを構築することで、この変化を次なる成長の契機とすることが求められるといえよう。

1、Logistics 4.0による物流の装置産業化

 Logistics 4.0とは、IoTの進化により実現化しつつある物流の新たなイノベーションである。その変革の方向性は、「省人化」と「標準化」の2 つに整理される。

 「省人化」とは、ロジスティクスの各領域において“人” の操作や判断を必要とするプロセスが大きく減少することを指す。例えば、倉庫ロボットの活用が拡大すれば、ピッキングは“人” の仕事ではなくなる。自動運転が実用化すれば、トラックドライバーの必要人数は大幅に減る。家まで届く荷物をドローンが運ぶようになるかもしれない。オペレーションの主体が“人” から機械やシステムに置き換わるのである。結果として、「“人” や会社によるオペレーションの差」は小さくなっていくだろう。

 「標準化」とは、ロジスティクスに関する様々な機能・情報が繋がることで、物流会社や輸送ルート/手段等をより柔軟に組み替えられるようになることを指す。例えば、倉庫やトラックを複数の荷主が共用することも遙かに容易になる。サプライチェーンの上流から下流までの情報が繋がることで、在庫の最小化と機会損失の縮小が格段に進むはずだ。

 多様な選択肢の中から最適な輸送ルート/手段を選び出す役割は、AIが担うようになる。物流会社としては、この機能・情報のネットワークに繋がっていることが大事となる。繋がっていなければ、選ばれないからだ。より多くの荷主/物流会社と機能・情報を共用できる「オペレーションの均質性・柔軟性」が問われるようになる。

 そして、「省人化」と「標準化」が進むということは、ロジスティクスが装置産業化することを意味する。「新しいサービスを設計する」、「対面でのコミュニケーションを必要とする」、「危機的事態の発生に対応する」といった、“人” の英知や存在が重要であり続ける領域もあるが、「運ぶ」、「保管する」、「梱包する」、「手配する」といった基本オペレーションは確実に装置産業化するだろう。脱労働集約により生産性は高まるが、一方で、機械やシステムへのより大胆な投資が必要とされるようになる。Logistics 4.0は、物流ビジネスにおける戦略的投資の重要性を格段に高めるといえる。

(※ 「省人化」と「標準化」の具体例は「THINK ACT 視点No.109:Logistics 4.0――物流ビジネスにおける新たなイノベーション」を参照頂きたい)

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