なぜオープンハウスの都心戸建て住宅は飛ぶように売れるのか?:ポーター賞企業に学ぶ、ライバルに差をつける競争戦略(4/4 ページ)
都心で好立地の戸建て住宅が今売れている。しかも主な買い手は年収500万〜1000万円の平均的な会社員だという。こうした物件を販売するのがオープンハウスとはどのような会社なのだろうか。そしてなぜそれが可能なのか。
資金ショートしないためのスピード感
大薗: そのほか、オープンハウスの特徴は、土地の調達から設計、施工管理、土地および建売営業までの流れが非常に速いことです。なぜこのことが大切なのでしょうか?
荒井: 不動産は大抵、独立系企業が倒産します。その理由は金融が詰まってしまうからです。そうならないためには常に手元資金が必要で、回転スピードが重要なのです。例えば、マンションの場合、開発が始まってから資金回収まで5年かかることはざらです。大手だと完成在庫があるので収益が安定しますが、中小の不動産であればあり得ません。だから当社は完成する前に全部売るようなスピード感で事業を行っているのです。
大薗: 顧客にとっては、早く成約しないと売れてしまうわけですから、決断へのいいプレッシャーになるわけですね。
荒井: あとは営業マンにとっても、回転速度を上げないと目標が達成できないような基準が設けられています。1つの課で週に1棟売るようなビジネススピードです。
大薗: 今のビジネスモデルで成長を考えたとき、今後は東京に似たような地方の大都市でビジネスを強化する可能性はありますか?
荒井: 名古屋では始めたばかりですが、既に成功は見えています。地方の中核都市でも通用することが分かったので、ここをしっかり伸ばしていきたいと思います。
ただし、常に次のビジネスを見つけていかないといけません。今のビジネスモデルは10年後は厳しいかもしれません。また、顧客は新築を買わないでリフォーム中心になるかもしれません。ニーズはどんどん変わっていくのです。将来的には、毎月安定した収益があるストックのビジネスもやりたいですね。
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