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ASEANに求められる技術革新――ASEANにおけるIoT/Industry 4.0の潮流飛躍(1/4 ページ)

技術革新や高付加価値化というと、日本や欧米などの先進国が中心と思うかもしれないが、近年それはASEANにおいても重要なテーマとなっている。

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Roland Berger

 技術革新や高付加価値化というと、日本や欧米などの先進国が中心と思われる方が多いかもしれない。しかし、近年、それは東南アジア諸国連合(ASEAN)おいても、重要なテーマとなっている。

 まず第1章ではASEAN各国政府におけるIoT/Industry 4.0への取り組み状況、第2章ではASEANにおける技術革新の潮流と関連企業の動向、そして第3章では日本企業にとってのASEANにおける技術革新の意味合いについて論じたい。

1. ASEANに届くIoT/Industry 4.0の波

 ASEAN企業は歴史的に、豊富な労働力を生かした労働集約型の低付加価値産業をベースに成長してきた。しかし今後、タイやマレーシアを筆頭に労働人口の成長は鈍化していく。また、賃金も上昇傾向にある中、それに見合う生産性を維持していかねばならないという課題がある。

 中国経済の鈍化も、中国を大きな輸出先としているASEANの重要なイシューである。ASEANから中国への輸出の多くは原材料や資源であり、中国の成長鈍化の影響をダイレクトに受ける。それが高付加価値の消費財・製品であれば需要は安定化するし、さらに、高付加価値化が進めば多様な輸出先を獲得でき、中国への依存度も緩和することができる。

 そして、グローバルにおける経済の成長エンジンは、IoTやIndustry 4.0など、テクノロジーやコネクティビティに変化している。ASEAN各国がグローバルの変化に乗り遅れないためには、技術革新が不可欠である。

1.1 ASEAN各国政府のかじ取り

 ASEAN各国の政府はこのような状況を深く認識し、濃淡はあれど、技術革新・高付加価値化を目指している。特に、シンガポールは特別な存在だ。最先端の技術立国を目指して世界中からあらゆる企業を誘致し、技術を取り込んでいる。また、Industry 4.0の生みの親であるドイツ政府との関係も深めている。

1.2 アジアにおける先進技術ポジションの取り合い

 一方、アジアにおける新興技術立国の座は、中国や台湾、インドなども狙っており、ASEANにとっては脅威である。

 特に中国は、人件費の高騰を背景に、製造業を中心とした技術革新に熱心に取り組んでいる。2015年には、「中国製造2025」を打ち出し、2025年までに日本・アメリカのような製造強国となる目標を掲げた。また、人工知能を主な国家戦略事業の一つとして選定し、産業育成に向けて巨額の資金を投下している。中国の人工知能関連の特許出願件数はすでに、米国に次ぐ世界2位である。

 ASEANは今後、高付加価値化に成功し、アジアをリードしていくのか、それとも、中国や台湾、インドなどのアジア周辺国の下請けとなるのか……今まさに、岐路に立たされている。

2. ASEANにおける技術革新、高付加価値化の潮流

 各国政府による後押しの中、新たな事業機会を見据えた欧米企業がASEANに参入し、現地企業と連携しながら、先端技術の導入・高付加価値化を進める取り組みが、既に始まっている。

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