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劣等感のない人はいない。使い方の問題だ
今から約百年前の世界に生きた心理学者であるアルフレッド・アドラーは「人間であるということは、劣等感を持つということである」と言いました。劣等感がない人はいない。使い方の問題だ、というわけです。
アドラーが提唱した「勇気」(Courage)とは「自分には他者へ貢献する能力があり、自分は他者から必要とされる価値があるという感覚」のことです。勇気がある人は、劣等感をプラスに用います。劣等感を「なにくそ」とバネにして、偉大な業績を成し遂げるのです。
一方で勇気がない人、すなわち「どうせ自分には他者へ貢献することなどできない。どうせ自分がいなくなっても誰も悲しんではくれない」つまり「自分には能力がなく価値もない」とひねくれている人はコンプレックスへ逃げ込みます。
一般的に、人々は劣等感とコンプレックスを同じ意味合いで使いますが、アドラーは違います。劣等感それ自体は良くも悪くもなく当たり前に誰もが持つ無色透明なものです。それをプラスに使う人もいれば、マイナスに使う人もいる。マイナスに使う場合をコンプレックスとアドラーは呼びました。
コンプレックスには2種類あります。1つは「病気や過去の体験など『弱さ』を言い訳にして、立ち止まり、なすべき人生の課題解決を回避する」ことです。
具体的には、身体の具合の悪さや心の症状を訴える、もしくは幼少期の家庭環境や親からの遺伝、過去の失敗を引き合いに出し「××だから○○できない」という人生のうそ、見かけの因果律を並べることで課題を回避し、他者からの同情や支援を引きだそうとすることです。
もう1つは「優越コンプレックス」です。これは「物理的な力や経済的な力、もしくは過去の成功体験、有力者とのコネなどを用いて『自らを強く見せかける』という『安価な手品』を用いて課題を回避し、他者からの尊敬や支援を引きだそうとすること」です。
アドラーは指摘しています。「どちらも同じである。何の努力もせずに優越感を味わっているのだ」というのです。
アドラー心理学において、この劣等感とその補償、優越性の追求は初期の理論であると共に中心となる理論です。私たちは多かれ少なかれ、このコンプレックスに苦しんでいます。その無益な道から逃れ、有益な努力へ向かうことが幸せになる、ということです。
では、どのようにすればコンプレックスから抜け出して幸せになれるのでしょうか?
私はその方法をアドラーの名言から再構築してみたいと思いました。その思いから出版したのが拙著『アルフレッド・アドラー一瞬で自分が変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)なのです。
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