検索
連載

未来構想とテクノロジーから考える「新しいイノベーション」視点(2/3 ページ)

イノベーションを起こしやすい時代になっている。発想を豊かにするためには、一産業に限らず横断的な視座で4つの枠組みで考えていくことが有効である。

Share
Tweet
LINE
Hatena
Roland Berger

3、イノベーションを考える枠組み

 イノベーションはさまざまな角度から未来を描くことで生み出される。それを構造的に示すと図Aのようになる。(図A参照)4つのフレームを示しているが、どのフレームから入ってもイノベーションの種を議論することができる。上からも下からも真ん中からも、だ。新しい技術から、あるいは技術の組み合わせから、あるいはイノベーション・エッセンスを具体的な産業へ適用することから、あるいは「こうだったらいいのに」という妄想から、などとさまざまだ。どの角度でなければならない、ということはない。

未来構想

 移動、住まい、都市、働き方、都市と地方、行政と民間など、人々を起点としたいくつかのテーマを出発点とし、未来や社会をどうしたら皆が幸せなのか、それはどういう世界なのか、そこにはどういう機能、事業、プレイヤーが必要なのか、どうすれば成り立つのか、といったことに挑戦するのが未来構想だ。

 未来構想を考える際には、技術的なことはできるだけ制約要件にしない。人間の根幹を問いただし、どういう社会が理想なのか、どういう構造であればそれが成り立つのかを考える。例えば、モビリティの進化によって移動はコモディティ化し、いつでもどこでも楽に安価に移動できるようになりそうだ。だが同時に、VRなどエンターテインメントの進化やコミュニケーションの利便性が増すことで、自宅を出なくとも楽しめる未来も想像される。

 すると、そもそも人にとって「余暇」とは何なのかが問いになる。それを突き詰めて、「リアルの世界こそが真の豊かな体験をもたらす」と仮定するならば、自宅内でリアルの楽しさを提案できる仕組みがあり、その提案を疑似体験、本格体験できるサービスを付加することで、結果「豊かな余暇」を享受するシステムが面白そうだ。それはセレンディピティのある提案機能、それを疑似的にその場で体験できるトライアル機能、リアルのエンターテインメント提供機能の3つが合わさっていることが大事なポイントになる。そして、それを新しいプラットフォーマーが担うようになる。例えば、未来構想とはこんな具合だ。

イノベーション仮説

 未来に起こりうるイノベーションの仮説を描くことに挑戦してみよう。それはいったいどういうビジネスモデルなのか。現在、アマゾンをはじめとしたプラットフォーマーは、その人の好みや類似した人の好みを単純にアルゴリズム化して提案することで利便性を高めている。それだけではなく新たなプラットフォーマーは本人の想像を超えたセレンディピティのある提案、そしてその提案を疑似的に体験できるVRコンテンツへの誘導の仕掛け、関心を持ったトピックをオンデマンドですぐに実現できる機動性(オンライン動画で見ていたおいしそうな名店のマーボー豆腐がすぐに手元へ届く、など)といった面が今後必要とされるのではないだろうか。

 AIによって仕事が効率化し、かつさまざまなIoTツールによって家事労働が軽減されると、余暇が多く生み出され、こういった仕掛けは豊かな生活に大きく貢献することになるだろう。ここでは、プラットフォーマー自身がラストワンインチを担い、新しい提案機能を担い、それらの体験とサービス提供を能力モジュールによって実現するモデルを描いており、これを弊社では「New Offering System」と名付けた。こういったイノベーション仮説は未来構想をヒントに描き出すことができる。

Copyright (c) Roland Berger. All rights reserved.

ページトップに戻る