デジタル変革に向けIT投資の好循環を生み出す「第三者保守」
ユーザーの視点に立ち、メーカーのサポート期間が終了したハードウェア機器でも障害診断と高品質なパーツを提供、アフターケアを行う「ホームドクター」のような保守サービスがある。デジタル変革に向け、さらなるIT投資が求められる中、その解決策として「第三者保守」が注目されている。
既存情報システムにかかる運用保守費の肥大化は企業にとって大きな課題だ。IoTやAI、X-Techといった新しい取り組みでさらなるIT投資が求められる中、その課題解決は急務だ。「第三者保守サービスをうまく活用すればデジタル化投資の原資を捻出できる」とするデータライブの代表取締役 山田和人氏にアイティメディア エグゼクティブ・プロデューサーの浅井英二が話を聞いた。
ユーザー視点で健康寿命を延ばす「ドクター」
浅井英二(以降、浅井) データライブがパイオニアとして国内市場を切り開いてきた「第三者保守」ですが、かなり浸透してきましたね。
山田和人氏(以降、山田) 日本には推定600万台のハードウェア(サーバ/ネットワーク機器/ストレージ)が稼働しているとされています。これらのハードウェアに対して、ユーザー企業の視点に立ち、メーカーのサポート期間が終了したとしても、障害診断と高品質なパーツを提供し、アフターケアしていくのがわれわれが掲げる使命です。診断や薬の処方から、場合によっては最先端の高度医療を施すドクターのような頼れる存在でありたいと願っています。5年後には10万台を当社で保守することが一つの目標です。
浅井 顧客企業はどういった業種が多いのですか。
山田 やはりコンピュータを多く持っておられる大企業様中心に通信キャリア様といった業種となりますが、かなり多岐にわたっています。
浅井 どういったきっかけで依頼されるのでしょうか。分かりやすい事例があれば教えてください。
山田 ある金融のお客さまのケースは、ユーザー、メーカー、SIerがそれぞれWin-Winになるモデルをうまく作ることができた事例です。ユーザーはハードウェア機器の保守切れを迎えるにあたって、今後も同じメーカーの製品は使い続ける意向でしたが、新しいシステムへの刷新は2年後にしたい、システム開発も同じSIerに依頼したいと考えていました。しかし、製品ライフサイクルの関係でメーカーからのパーツ供給が難しくなってしまいます。また、SIerも保守切れの製品に対する障害対応や修理を行う体制を整えることができません。そこでわれわれが障害診断や必要となるパーツを提供することで、2年後の新システム稼働まで、メーカーと変わらない品質の保守サービスを実現することができました。
浅井 既存システムを延伸稼働させて生かしつつ、ユーザー、メーカー、SIerのパートナー関係を良好に維持でき、まさに「三方よし」ですね。
山田 実は、数年前まではわれわれへのSIerやメーカーの方の目線はとても冷ややかでした(笑い)。このような共存共栄モデルを掲げ、当社が敵対するものではない、ユーザー企業にとって最適な保守を実現するソリューション企業だと捉えていただけるとありがたいです。
「メーカー品質」を実現する技術と仕組み
浅井 そもそもどういった経緯で事業を始めたのですか。
山田 インフラエンジニアとしてデータセンターで働いたあと、中古サーバ販売の事業を始めました。リース会社の倉庫に行くとリースアップした高価なサーバが置いてあり、これを安価で提供したら喜ばれるのではと感じて始めたのがきっかけです。
浅井 そのビジネスがヒットした。
山田 いえ、最初はまったく売れませんでした。ただ、保守業界の仕組みを調べているうちにメーカーの保守切れ後のハードウェア保守で皆さんが課題を抱えていることが分かりました。「故障に備えて代わりのパーツが欲しいが手に入らない」「別のハードウェアの部品が使えそうだが検証する時間がない」。そんな要望に応えようとして始めたのが第三者保守です。メーカーに代わって第三者が保守するビジネスは米国や英国では一般的だったので、国内でもニーズがあると感じていました。
浅井 とはいえ、パーツがあれば誰でもできるわけではないですよね。いろいろな技術やノウハウが必要なのではないでしょうか。
山田 おっしゃる通りです。まずパーツを調達するために、海外の再生市場(リユース/リフレッシュ市場)と連携したグローバル調達網を作りました。あわせて、障害切り分けの技術や故障解析、修理、交換などの技術を磨いていきました。さらに、日本各地でサービスを提供するために、各地域の修理会社や故障対応会社との連携も行いました。そうするうちに、「こんなことできない?」というように、メーカーやベンダー、地域のSIerの方などからも声が掛かり、協力体制が出来上がっていきました。
浅井 検証や技術開発のためのセンターも開設されていますね。
山田 荒川にある東京テクノセンターは、メーカーやSIerの方が訪れることも増えてきました。技術開発や検査体制を実際確認してもらい「これなら大丈夫」と評価を得ています。東京テクノセンターには、メーカーで実際に技術開発を担当していたエンジニアもおり、「メーカー品質」に負けないサービスを提供することができるようにしています。
浅井 パーツ供給や障害解析をデータライブが専門的に担うことで、メーカーが新製品の展開に専念できたり、SIerはシステム開発に注力できたり、といった役割分担も可能になりますね。
山田 ある国産メーカーの方が話していたのは、保守サポートにはいくつかのレベルがあっていいということです。メーカー品質が求められるケースもあれば、最低限のサポートでいい場合もある。当社が独立した立場で協力することで、そういう細かなニーズに柔軟に対応できると思っています。
デジタルビジネス向けの予算を作り出す手段に
浅井 技術力を維持するために大切にしていることは何ですか。
山田 一つは、多能工化です。このメーカーのサーバしかできないではなく、別のメーカーのサーバも分かる、ストレージやネットワークも分かる、そんな人材を育てていこうとしています。もう一つは、「必要なら作れ」という精神です。人が作ったものである以上、チャレンジすれば、どんな機器でも人が解明でき、直して動かすことができるはずです。「ファームウェアがないから難しい」ではなく「ファームウェアくらい自分で作れ」という気概で取り組んでいます、あくまで気概ですが。技術力の維持には、この2つは欠かせません。
浅井 多能工化やチャレンジ精神は、技術に限らずいえることですね。日本のIT業界がこう変わってほしいという思いはありますか。
山田 システム開発や保守を丸投げするのではなく、自分たちで責任を取るという環境が醸成されていけばいいと思います。米国との対比でいえば、米国のエンジニアはユーザーに8割、ベンダーに2割いるといわれています。そのため、みんな同じベクトルで仕事ができているわけです。一方、日本はその逆でユーザーに2割しかいない。すると、いくら顧客の視点で、といって、ユーザーとベンダーの利害は相反しやすくなります。今後さらにITの力を使って、新たなビジネスにスピード感を持って取り組むためには、利害関係のベクトルを一致させていかなければ、日本企業は生き残れなくなるでしょう。また、自分たちの仕事がビジネスに直結していると感じることで、エンジニアの働き甲斐にもつながるのではないでしょうか。
浅井 企業は現在、IoTやAI、X-Techといった新しいビジネスの創出に積極的に取り組んでいます。ただ、そのための予算が潤沢にあるわけではありません。第三者保守によるシステム延伸はそうした取り組みに予算を振り向ける一つの手段にもなりそうです。
山田 その通りです。そこは今まさにデータライブが力を入れているところです。第三者保守でコスト削減するだけでなく、そこで得たお金を原資として新しいビジネスの創出に使ってほしい、既存のシステムが安定稼働しているならそれを維持し、新たに投資すべきところに投資してほしい。少し大きな話になりますが、日本は少子高齢化という点で「世界のトップランナー」です。これからITによって生産性を高めなければ、人手不足で現場が立ち行かなくなる可能性が高いです。そのときに「日本は人口が減っているのにGDPは増加している」と世界に示すことが求められていると考えています。われわれがその取り組みに寄与したいという思いが強くあります。
浅井 デジタルビジネスや働き方改革の取り組みでも、データライブのサービスが生きてくるということですね。
山田 われわれが扱っているリユース品やパーツは、再生市場を通して社会に還元されていく仕組みがあります。第4次産業革命の中でも、そうした価値は失われませんし、むしろ全てのプレイヤーが共存共栄できるモデルとして重要性が高まってくるのではと考えています。それにさらに貢献するために日々励んでいます。
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提供:データライブ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2018年4月28日