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働き方改革を経営者の視点で読み解くビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

労働時間至上主義から個人の労働生産性まで考慮した評価に変えていく必要があるのではないだろうか。

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ユニオンとブラック社員 働き方改革を考える

 現在開催されている、第196回通常国会において、働き方改革関連法案が審議される予定である。今国会は働き方改革国会といわれているほど、最重要法案との位置付けになっている。2月末に本年度予算が衆議院で可決されたことに伴い、今後個別法案が各委員会で順次上程され、審議される予定である。

 3月8日に自民党厚生労働部会で働き方関連改革法案の法案審査が行われた。この部会で働き方改革の国会でのスケジュールが示されたと思われる。本格的な議論がスタートしたといってもいい。

 働き方改革関連法案とは、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働者派遣法、雇用対策法、労働契約法の改正が柱となる。企業にとっては、就業規則変更の実務面だけでなく、人件費などの予算面にも影響を与えることから非常に重要な法改正になる。

 働き方改革では、健康管理と生産性向上の側面からの労働時間短縮、正規と非正規との待遇格差が大きな柱である。

 前者は、労働基準法の改正などの対応になる。労働基準法第36条いわゆる36協定が、残業時間の規制がなく無尽蔵に働かせることができるとの批判があり(現状でも労働基準法規則にて単月45時間までとの規制はある)、時間的制限を設け、罰則付き内容(罰金刑など)となる予定である。改正案では、単月45時間、年360時間、繁忙期年720時間、月100時間、複数月平均80時間とされている。(45時間を超えられるのは最大年6回まで)週休2日制を採用している企業だと1日2.5時間強の残業で45時間を超えてしまう。長残業が恒常化している企業においては、早急な増員などの人員政策およびそれに伴う資本政策を行わなければならない。日本の企業はある程度の残業を見込んだ人員政策をとっており、これにより、ますます人手不足になるのではないかと考えている。また、みなし残業込みの給与体系の企業で、45時間以上のみなし残業時間を設定している企業は法律違反と見なされる可能性が高く注意が必要である。早急に改善すべきである。

 懸念事項として、上司から人員や仕事量が変わらず、ただ単に早く帰れと言われ、言われた側は仕事を持ち帰り、サービス残業をする可能性がある。この上司の行為を時短ハラスメントと呼ぶ。マネジメント能力のない管理職の場合は、この様なことが起こる可能性がある。そこからブラック企業と呼ばれる可能性も出てくる。

 持ち帰り残業(サービス残業)の禁止や管理職がサービス残業を行った場合の当該社員への注意などを就業規則に盛り込んでも良いのではないか。いかにサービス残業をなくす体制を構築すべきである。

 なぜ、サービス残業が横行するか。これは、評価が労働時間至上主義になっている企業が多いからではないか。もっと個人の労働生産性まで考慮した評価にすべきであり、個々人の労働生産性を数値化すべきである。これこそが真の働き方改革ではないだろうか。企業全体の労働生産性だけを推し量るのは時代遅れである。

 働き方改革では、残業時間を抑制することも重要であるが、働いた分の賃金を支払われないことが問題である。サービス残業の禁止を法案に書き込んでもいいのではないか。サービス残業の方が労働者にとり、深刻な問題のはずである。働き方改革で、残業代が年間4〜5兆円削減されるとしている。消費税1%に相当する。その分給与減とならずにしっかり給与として還元される給与体系にしていかなければならない。企業内部の資源配分が重要になる。そうしないと、景気に影響を与える可能性も否定できない。

 正規と非正規の待遇改善については、同一労働同一賃金などでの対応になる。同一労働同一賃金は、ヨーロッパで始まり、職務が同じならば同じ賃金を支払う考え方である。同一労働とは、職務に対して与えられている責任や権限、人事異動の有無といったものも含めて総合的に判断される。

 ヨーロッパでは、職務ごとに賃金が支払われており同一賃金が可能だとの意見もある。日本で実施する場合は、国が職務ごとの評価基準を作成するか、企業に作成させるしかない。企業に作成させるにはかなり手間になるであろう。賃金規程や、評価基準の作成が重要になる。同一労働同一賃金が実施される前に非正規労働者も含めて検討を進めるべきである。

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