プロ経営者 松本晃会長の下、現場では何が起きていたのか――カルビー大変革の舞台裏:CIOへの道(2/5 ページ)
日本を代表するプロ経営者として知られるカルビーの元会長、松本晃氏。同氏がカルビーの経営に大なたを振るったとき、人事やIT部門はどんな施策でそれに対応しようとしていたのか。現場の取り組みに迫った。
分かりやすい言葉で繰り返し同じことを言い続け、社員を巻き込んだ松本氏
田中氏 変化の中では、不満を持つ社員もいました。それでも、まずはビジョンを打ち立て、自分の考えや方針を短くて分かりやすい言葉にし、さまざまな手段で繰り返し伝えていくという松本さんのスタイルは徐々に浸透し、同調する社員が増えていきました。
――(聞き手 中野氏)私もいろいろな記事を読みましたが、松本さんは本当にずっと同じことをおっしゃっているんですよね。シンプルな事を繰り返し話をされている。退任してライザップに行くタイミングでも言っていることは変わりません。一貫している。なかなかできることではないと思いますが、社内でもそうだったのですね。
田中氏 はい。松本さんは、就任した翌日にビジョンを作り、10年間ずっと繰り返して伝えていました。
――社員に会社のビジョンやミッション、経営のイシューを伝える「インターナルコミュニケーション」は、広報部門か人事部門が担当する会社が多いですよね。カルビーさんの場合はどうですか?
田中氏 広報部門で社内向けの施策として関わっているのは、社内報の発行とイントラネットの運営管理ですね。松本さんと、社長で当時COO(現CEO)を務めていた伊藤秀二がそれぞれイントラにブログを持っていたのですが、特に松本さんのブログは更新されるとアクセスログがピーンと跳ね上がるくらい、社員の関心が高かったです。
また、われわれの中心的な仕事として社外メディアへの情報発信がありますが、経営者が社外で話したことは社内にも還流します。社員が記事を読んだり映像を見たりして、「社内で言っていることと同じだ。やっぱり本気なんだ」と感じるわけです。
社員とのリアルの場でのコミュニケーションとしては、「タウンホールミーティング」があります。これは広報部門主体でやっているわけではありませんが、経営者が全国40カ所ほどの工場や支店、子会社をまわって自分たちの考えを直接話し、社員の声を聴く――という対話の場を持つんです。松本さんの就任から数年間は、これを年に2回やっていました。
――会長や社長が、かなりの時間を社内コミュニケーションに割いていたということですね。
田中氏 そうです。社員のところにもお得意先にも、自ら出向いていって直接対話をするのが松本さんのスタイルでした。その時間を作るためにも、会議の時間を減らしたり効率的な仕事ができる制度を作るといった働き方改革が必要で、それをわれわれにも厳しく求めたわけです。ただ、厳しい成果主義を推進する裏側に、密なコミュニケーションがあるのは忘れてはならない部分ですね。
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