ANAを変えた、見えない課題を発掘する「魔法のワークショップ」とは:歴史ある企業はなぜ変わったのか(3/3 ページ)
歴史ある大企業にイノベーションを起こす――。この難題をやってのけたのが、ANAでイノベーション推進部の部長を務める野村泰一氏だ。インタビューの後編では、ANAの役員たちも驚いたという課題発掘ワークショップについて聞いた。
イノベーションの輪を広げるために重要なこと
こうしたさまざまな施策を段階的に打っていくことで、社内システムの開発に関してはイノベーションの文化が徐々に醸成されてきたという。
その一方で、予約システムやチェックインシステム、コンタクトセンターシステムといった顧客向けサービスに関しては、社内システムとは別のグループで開発と運用が行われており、ここに対しても野村氏は社内システムと同様、イノベーションのための仕掛けを幾つか取り入れてきた。その1つが、マイクロサービス型アーキテクチャの導入だ。
旅客系システムや顧客系システム、運航系システムといった基幹システムはホストコンピュータ上に構築されており、その上に顧客向けのさまざまな機能を持ったアプリケーションが構築される。
これらのアプリケーションは、当初はそれぞれを個別に一から構築する計画だったが、構築にかかるコストや時間が膨大に上るとともに、システムの柔軟性という面でも課題があった。そこで、ホストコンピュータの機能やデータをマイクロサービスとして抽象化・部品化し、それらを組み合わせることでアプリケーションを構築できるアーキテクチャを採用した。
これによって、コストを抑えながら柔軟に顧客向けアプリケーションが構築できるようになり、顧客サービスの質向上に大いに貢献しているという。
イノベーションの成果は「社内外にアピール」
なお、ここまで挙げてきたような数々の施策が成果を上げるためには、その価値についてステークホルダーの理解が得られるよう、社内プロモーションが不可欠だと野村氏は強調する。
「ツールやソリューションをいくらそろえても、『困っている人』と『助ける人』同士が結び付かなければイノベーションの花が咲くことはありません。困っている人は誰が助けてくれるか知りませんし、助ける人は誰が困っているかを知りません。こうした状況を打破するためには、困っている人と助ける人のそれぞれの認知度を上げる必要があります。
そのために私たちは、普段自分たちが行っているイノベーションの活動や成果を紹介する『イノベーションTips』というイントラサイトを立ち上げて、自分たちの活動を社内でプロモーションしています。こうして社内での認知度が上がり、多くの人が輪に加わってくれることで、初めてイノベーションが実現すると考えています」
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