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いま力を発揮しなくてどうする。一日でテレワーク環境を全社展開した情シスの現場力――フジテック CIO 友岡賢二氏緊急特集 デジタル変革の旗手たち――テレワーク対応編(2/2 ページ)

困難な状況でも、ビジネスを止めない、変革を諦めない、強い意思で突き進んでいくリーダーの姿。一般的にテレワークが難しいとされる業種でもできるところから展開していくヒントとは?

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 「僕らにできることは、できる限りトラフィックを少なくすることです。その方法を社員にも分かりやすく伝えています。フジテックはG Suiteを使っていますが、Gmailを開けて、Googleカレンダーを開けて、Google ハングアウトを開けて……と、皆さんがタブをいくつも開けていると、当然セッションが張られたままとなり、通信が発生します。だからできるだけ閉じてね、メールはスマートフォンでも読めるよ、インターネットの閲覧はVPN越しでやらないでね、という感じでトラフィックを減らす努力をお願いしています」(友岡氏)

テレワークを導入して気づいた時代遅れのIT

 友岡氏は、短期間でのテレワーク導入を通し、いくつかの時代遅れに気付かされたという。

 「まずは、VPNという仕組みそのものがボトルネックになるということですね。拡張性、ユーザビリティ、どちらにおいても非常に問題があると思っています。テレワークでは、VPNを介していったん社内システムにアクセスした後に、そこからまたネットワークの向き先を判断して外に出ていくという形をとっています。社内に認証やゲートウェイを持っているがゆえに、いったん社内に入らないといけないという考え方ですが、こういったネットワークデザインの在り方は、時代に即していないのだと改めて実感しました。2点目は、やはりクラウドにオールインしないとダメだなと。当社はまだハイブリッドですが、フルクラウドのほうが拡張性においてもBCPの観点においても望ましい」(友岡氏)

アフターコロナに向けて、情シスのアジェンダ

 好むと好まざるに関わらず、オンライン前提の社会が訪れようとしている。「ウィズコロナ」「アフターコロナ」というフレーズも聞かれるようになってきたが、劇的な変化の中で、情報システム部門の役割はどう変わっていくのだろうか。

 「フジテックにも、オフィスに行かないといけない場面がまだ残っています。紙の請求書や契約書、納品書の事務処理は、SaaSを使って全面的にデジタル化していく必要がありますね。より細かいレベルでは、社内にあるファイルサーバーには何の価値もないと思っているんです。VPNでないとアクセスできないし、セキュリティ面でもランサムウェアなどのターゲットになりやすい。実はつい最近、他社とコラボレーションするためにBoxを導入したんです。ファイルサーバーの役割は、GoogleドライブとBoxに移行してしまおうと考えています」(友岡氏)

 GoogleドライブとBoxであれば、ユーザーはスマートフォンからもアクセスできるようになり、利便性が格段に上がる。今は在宅勤務が取り沙汰されているが、友岡氏が目指すのは、建設現場や顧客先、出張先など、どんな場所にいても生産性の高い仕事ができる組織だ。

 「セキュリティの観点でも、VPNという“割と低い堤防”をさも安全かのように過信してきたシステムの在り方が変わる時に来ています。インターネットで安全にアクセスでき、生産性の高い仕事ができる環境をどう作っていくかが、アフターコロナに向けて、情シスの大きなアジェンダになると思っています」(友岡氏)

新型コロナがエンタープライズにもたらしたもの

 これまで従来型の日本の大企業では、昔ながらの人事制度や就業規則に縛られ、テレワークの本格導入に二の足を踏んでいた。こと製造業においては、工場の稼働時間に合わせた勤務時間を基本とし、間接部門であっても在宅勤務そのものが認められていなかった。新型コロナウイルスにポジティブな要素など見いだしたくもないが、ようやく風穴が開いたともいえる。

 友岡氏は、「ITの備えや構えができている組織とできていない組織で、早晩ものすごい差が出てくるだろう」と指摘する。「ほんの数カ月前まで、オンプレかクラウドかという議論が存在していたが、これには完全にトドメが刺されたと思う。これまでさまざまな抵抗にあってクラウドが使えなかった組織でも、ゴーサインが出る局面が増えていくでしょう。孤軍奮闘クラウド推進を訴えてきた人たちは、走りこんで鍛えてきた成果をここで発揮しないでどうする。ITが組織のケーパビリティを決する。僕たちが動くときです」(友岡氏)


桜咲くフジテックの事業所。友岡氏らが奔走する中、大阪地方は桜が満開に。
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