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eVTOL 自動運転に見る新しいモビリティー事業化のカギ視点(1/2 ページ)

モビリティーに限っても、ここ5年程度で技術革新に伴い、新しいサービスの実用化や実証実験が進んでいる。

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Roland Berger

1、技術革新に伴う新しいモビリティーの出現

 「ディスラプティブ」や「100年に一度の」といった、大きな進化を示すキーワードが世の中を賑わせている。実際、モビリティーに限っても、ここ5年程度で技術革新に伴い、新しいサービスの実用化や実証実験が進んでいる。

 例えば、eVTOL(垂直離着陸機)という言葉を聞いたことはあるだろうか。「空飛ぶクルマ」といったほうが分かりやすいかもしれない。また、大型のドローンともいえよう。例えば、ドイツのVolocopter、日本ではCartivator、中国のEHangといったプレイヤーが実用化を目指している。また、日本政府も「空の移動革命に向けたロードマップ」を発表し、トヨタが米国のJoby Aviationへ約400億円を投資するなど、具体的な動きが始まっている。eVTOLは、構想が発表され、資金が流れ始め、実証実験が始まりつつあるフェーズにある。

 自動運転という言葉はもっとなじみがあるだろう。特にLevel 4、5と呼ばれる自動運転はドライバー不要であり、その実用化に向けた実証実験は世界各地で行われている。例えば、米国のwaymo、日本では福井県の永平寺町での実証実験、ANAの空港内バスの実証実験など、多くの事例がある。自動運転は、既に一般の方に乗ってもらい社会受容性を高めると共に、実際のサービス実施時の課題の検討や、インフラ・制度整備を行うフェーズにある。

 UberやGrabという名前は聞いたことがある人は多いだろう。ライドシェアは海外で既に広まっており、アプリを利用し車両と乗客をマッチングするものである。タクシーより安価なことが多く、値段があらかじめ分かり、キャッシュレスであり、ドライバー評価の仕組みもあることから、安心・安全な移動を実現したことも普及の1つの要因であろう。

 このように、技術革新により多様なモビリティーやサービスが創出される。それらには、すでに実用・浸透しているものから、これから事業化を狙うものまで多様である。では、新しいモビリティーを事業化するには、何を考える必要があるのか、全体像を考えていきたい。

2、実用化・普及するために必要な要件

 新しいモビリティーと言うと、その技術開発にまず注目されることが多い。しかし、技術だけではサービスが実用化され社会に浸透させることはできない。(図A参照)


図A:実現に必要な要件(eVTOLを例に)

 まず、ビジネスとして成立するだけの(1)需要が見つけられていることが必要だろう。そして、その需要が存在する(2)シーンが定義される。つまり、eVTOLであれば、どんな場所を、何を載せ、どれくらいの速度・高度で飛行するのかである。シーンが定義されると、そのシーンを安全に飛行させるために必要十分なスペックが決まってくる、つまり(3)技術レベルである。限られたシーンのみの飛行であれば、そこまで高い技術レベルは不要かもしれない。

 一方、新しいモビリティーであるため既存の(4)規制・制度や(5)インフラでは対応できない局面もでてくるだろう。新しいモビリティーが安全に活用される根拠となる規制・制度と、ありものをできるだけ使いながらのインフラ整備が必要となる。そして継続的にサービスが提供されるためにも、事業を担う(6)オペレーターが必要である。

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