経営者と投資家の結節点としてのIR〜戦略レンズと財務レンズで企業を視る〜:視点(1/2 ページ)
投資家はこれらのレンズを通して企業を視ている。IR担当役員自らこの投資家レンズをのぞき、レンズに映る自社の姿を経営者に伝えていかなければならない。
本社スリム化の煽りを受けるIR
日本 IR 協議会の第27回「IR 活動の実態調査」(2020年5月)によると、IR実施企業におけるIR専任者の数は、3人以下が43%、なしが40%。兼任者の数は、3人以下が62%、なしが19%。前年より専任者が減った企業は75%、兼任者が減った企業は71%。担当者の平均実務経験年数は5年未満、外部採用経験のある企業は27%にとどまる。
IR活動のKPIとして、「株主構成」「アナリストや投資家との面談回数の増減」「時価総額」「アナリストレポートの数や品質」があげられる一方、当該KPI達成をIR活動の成果と捉えるべきか、は意見が分かれた。活動評価の難しさと相まって、本社スリム化の煽りを受けるIRの現実が透けて見える。
険しい「対話先進国」への道
投資家は、長期的な企業価値向上や収益性指標に対する経営者の感度の低さに不満を持っている。日本企業にROE(自己資本純利益率)8%超を求めた、経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンティブ」最終報告書(「伊藤レポート」)。2014年8月の公表以降、ROEを経営指標に掲げる企業は確実に増加した。それでも、同レポートの掲げた「経営者と投資家の共創」は道半ば。顧客市場との対話に比べ、資本市場との対話は遅れがちだ。
本来IRには2つの役割がある。投資家目線の「受信」と経営者目線の「発信」だ。経営者目線の決算報告や経営計画説明にとどまらず、投資家目線で自社を客観視できてこそ、望ましい株主構成、適正な株価形成、持続的な価値創造が可能になる。チューニングの鍵は、「戦略レンズ」と「財務レンズ」。投資家は、常にこれら4群6枚のレンズを通して企業を視ている。IR担当役員自らこの投資家レンズをのぞき、レンズに映る自社の姿を経営者に伝えていかなければならない。(図A参照)
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