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保有技術・保有アセットを生かしたユーザー目線での事業作り視点(1/2 ページ)

新しい事業を創出する場合、保有技術や保有アセットをうまく生かすという考え方は正しいが、その技術やアセットを主語に考えてしまいプロダクトアウトの発想になっていないだろうか。

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Roland Berger

 日本国内では人口減少局面に入り、さらに新型コロナウイルスのまん延による経済の一時的停滞や生活の仕方の変化のなか、新しい事業を創り出すことで成長を目指す企業は多いだろう。その時、自社の保有技術や保有アセットのうまい活用を模索しながら新しい事業の創出を考えるのは一つの合理的な方法であろう。

 しかし、新しい事業の良いアイディアが見つからない、もうかるのか判断がつかない、ローンチしてみたがうまく売れないなど、いろいろな壁にぶつかる場面もあるのではないか。新しい事業を創出するうえで、「ありものの技術で何ができるだろうか」とか「せっかく持っているアセットを生かせないか」といった観点のみで考えていないだろうか。

 保有技術や保有アセットをうまく生かすという考え方は正しいが、その技術やアセットを主語に考えてしまいプロダクトアウトの発想になっていないだろうか。

 では、新しい事業が創出されるとはどういうことか。それは、提供する製品・サービスに対してお金を払うエンドユーザーがいるということ。つまり、新しい事業がエンドユーザーにとって日々生活するうえでうれしいことにつながるのであればお金を払う。こと、モノがあふれる昨今においては、「本当に必要なモノ・コト」は何なのか、潜在的な需要(=エンドユーザーのうれしさ)を見つけることがスタートラインだろう。

 では、どのような考え方で事業を創出するべきなのか。図Aに考え方を示した。ポイントは需要であるエンドユーザーの生活シーンの全体像が描かれ、その生活の全体像の中から対象シーンを切り取り、そこに価値を提供する(=つまり事業を行う)、という構造で捉えることである。そして、提供する価値を実現するために、必要な機能があり、その機能を実現するための技術やアセットが存在する、というフレームである。


図A:エンドユーザーの生活を起点とした事業創出の考え方

 この構造を念頭に、まずはエンドユーザーの生活シーンを描くことである。人々の日常生活そのものを描くことであり、それは専門家でなくとも技術者でなくとも、一人の生活者として誰でも描くことができるはずだ。ただし、描く時に製品や業種軸で描いてはいけない。あくまでも生活シーンを切り取って描くことが重要である。例えば、自動車を使うシーンだけを抜き出して描くのではなく、人々の移動と移動する目的(=移動した先での過ごし方) を含めて全体像を描くことが必要である。

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