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保有技術・保有アセットを生かしたユーザー目線での事業作り視点(2/2 ページ)

新しい事業を創出する場合、保有技術や保有アセットをうまく生かすという考え方は正しいが、その技術やアセットを主語に考えてしまいプロダクトアウトの発想になっていないだろうか。

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Roland Berger
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 エンドユーザーの生活シーンが描かれると、そこには多種多様な潜在的な需要が包含されている。その中でどのような価値をエンドユーザーに提供するのかを考える。提供価値というのは、製品やサービスそのものではなく、「誰にどのようなうれしさを提供するのか」ということであり、エンドユーザーがお金を払ってくれる理由を示すことでもある。

 提供価値、つまり「誰にどのようなうれしさを提供するのか」定まったうえで、実現するために必要な機能は何で、その機能を実現するために必要な技術やアセットを定めることができる。その時、自社保有の技術やアセットだけでは満たしきれない機能があるかもしれない。その不足機能を充足するためにどのような技術やアセットトを獲得すればよいのか検討していくことになる。また、保有する技術やアセットについても、既存事業でその技術やアセットが担っている機能ではなく、別の機能として生かすことも想定される。

 ここまで、検討のフレームや理想的な検討のステップを述べたが、現実にはなかなかこのようなきれいなステップで考えることは難しい。既存事業のために技術やアセットを保有しているため、どうしても保有技術やアセットを起点に考えざるを得ない面もあるだろう。

 しかし、重要なのは保有技術起点や保有アセット起点のみに依拠しないこと。エンドユーザーの生活シーンに対してどのような価値を提供するのかということと、保有技術やアセットをうまく活用することを、両面から考えることが、新しい事業を創出するうえでの近道になるはずだ。

著者プロフィール

山本和一(Waichi Yamamoto)

ローランド・ベルガー プリンシパル

慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了後、ローランド・ベルガーに参画。自動車、航空などのモビリティー分野、及び製造業を中心に、幅広クライアントにおいて、ビジョン策定、事業戦略、新規事業戦略、戦略の実行支援など、多様なプロジェクト経験を有する。また、官公庁への支援も豊富であり、多様のステークホルダーを俯瞰した日本の産業競争力の強化へも取組む。


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