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EV充電ステーション収益化に向けた2つの鍵〜価格弾力性の見極めと事業モデルの選択〜視点(1/2 ページ)

活況を呈しているEV充電ステーション市場だが、収益化への道のりはまだ険しい。

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Roland Berger

活況を呈するEV充電ステーション市場

 2019年度末(2020年3月31日)時点の給油所数(国内)は2万9637。1994年度末の6万421を境に減少を続けている。一方、電気自動車(EV)充電ステーション情報サイトGoGoEVによると、2020年10月4日時点の公共ステーション数(国内)は2万2357(急速充電CHAdeMO 7690、普通充電 1万4485、TESLA 182)。日本の道路の総延長距離は 1279万6519キロ(出所:国土交通省「道路統計年報2019」)。現実には地域差があるものの、単純計算で57キロ毎に1つの公共ステーションが存在することになる。

 世界に目を転じてみる。国際エネルギー機関(IEA) 「Global EV Outlook 2020」によると、2019年末の公共ステーション数は86万2000。2018年末比で60%増加、EV自体の販売増加率を上回った。更にこの外数に、650万もの非公共(自宅や職場)ステーションが存在する。

 2020年1〜6月、EV充電ステーション関連スタートアップの資金調達件数は26件。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、通年で過去最高(31件)を記録した2019年を上回る勢いだ。その事業内容も多岐にわたる。

 公共向け充電設備開発を手掛けるTrojan Energy(英)やPluginvest(ベルギー)、非公共向けのWallbox(西)、EV充電ステーション運営会社(Charging Point Operator(CPO))向け充電網を管理するプラットフォーム開発企業Driivz(イスラエル)、エネルギーコストの観点から車両充電を最適化するソフトウェア開発企業Amply Power(米)など。石油メジャーや自動車会社によるEV充電ステーション投資も盛んだ。

不透明な事業採算性

 しかしながら、収益化への道のりはまだ険しい。世界の公共ステーション(急速充電)の82%、公共(普通充電)の52%、非公共の37%を占めるなど、拠点数で圧倒的に先行する中国では、助成金目当てのEV充電ステーションがへき地にまで乱立。公共ステーションの稼働率は10%未満。目下、成長しているのは非公共、中でも自宅用で、公共向け中小事業者のほとんどは赤字といわれる。日本でも、自動車会社や販売会社が整備するもの、政府や自治体の助成金を活用したものがほとんど。1時間あたり70〜150円(普通充電)、30分あたり250〜600円(急速充電)といった価格設定では、独立した収益事業には程遠いのが実情だ。

収益化の鍵(1):価格弾力性の見極め

 EV充電ステーションの立地は、従来給油所と大きく異なる。高速道路のSA/PAや一般道路は主要立地とならない。キーワードは「ながら充電」。睡眠しながら自宅充電、勤務しながら職場充電といった非公共ステーションの他、食事しながら、買い物しながら、観光しながら、遊びながら、など公共ステーションも「目的地」立地が中心となる。路面に内蔵された送電用コイルからのワイヤレス充電は、走りながら、だ。

 そして、立地は需要の価格弾力性を規定する。基準となるのは、最も利便性が高く経済的な自宅充電。各立地を「自宅からの距離」と「車輛の滞留時間」の2軸でマッピングすれば、ドライバー視点での許容価格が見えてくる。ノルウェーの例では、自宅充電の7倍超の価格が許容される立地がある一方、2倍すら許容されない立地もある。わずか1年間で投資回収できたケースもあれば、定格出力の最適化やリアルタイムプライシングに加え、立地戦略の再構築なくしては永遠にペイしないケースもあった。(図A参照)


EV充電ステーションのセグメント特性
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