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DX推進は、いかに戦略と体制を確立し、人材を育成するかが成功のカギ――サツドラ独自のDX戦略とはITmedia エグゼクティブセミナーリポート(1/2 ページ)

AIカメラなどの先端テクノロジーの活用や異業種連携により、店舗のデジタル化にいち早く乗り出したサツドラ。コロナ禍では、AIカメラソリューションをわずか2週間で共同開発した。サツドラ独自のDX戦略を学ぶ。

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 12月に開催された「ITmedia DX Summit Vol.6.」に、サツドラホールディングス 代表取締役社長の富山浩樹氏が登場。「サツドラが語る、小売が持つデジタル化の課題と可能性」をテーマに、モノを売るだけのドラッグストアビジネスから、地域に関わるあらゆるヒト、モノ、コトをつなぎ、未来を豊かにする地域コネクティッドビジネスへ進化するためのデジタル変革(DX)について講演した。

北海道から日本中へ、新しい未来を提案するサツドラ


サツドラホールディングス 代表取締役社長 富山浩樹氏

 「地域をつなぎ、日本を未来へ」というコンセプトに基づき、北海道から日本中へ、新しい未来を提案するサツドラホールディングス。ドラッグストア事業を中核に、地域マーケティング事業、調剤事業、卸・商品開発事業、エネルギー事業を展開している。ドラッグストアであるサツドラは、北海道を中心に約200店舗を展開。グループ会社が運営する共通ポイントカード「EZOCA」は、北海道の194万人以上が利用している。

 富山氏は、2007年にサッポロドラッグストアーに入社し、2015年に同社の代表取締役に就任。2016年8月には、サツドラホールディングスを設立している。IT関連のグループ会社としては、2017年にPOSシステム開発、提供を事業とするGRIT WORKSを設立。現在、AIカメラソリューションを開発、提供するAWLと業務提携(当初は、AWLの前身であるAI TOKYO LABをグループ会社として統合)し、取締役CMOも務めている。

 サツドラのDX推進における重点戦略は、(1)取り組みと体制づくり(土台づくり)と(2)成長の場づくりと活躍する人材の育成の2つ。

 取り組みと体制づくり(土台づくり)では、まずは米国と日本のDXの課題と背景の違いについて紹介。「米国では、7割のIT人材が事業会社に所属していますが、日本では7割のIT人材がIT(SI)企業に所属しています。事業会社にIT人材が少ないことから、DXを起こしにくいことが日本企業の最大の課題といえます」(富山氏)

 DXの推進では、サツドラホールディングスでデジタル戦略を立案し、CTOを中心にIT基盤構築とクラウド化推奨体制を確立。AWLでリテール向けAIソリューションを開発し、GRIT WORKSでリアルタイムクラウドPOSを開発するという体制を構築。

 成長の場づくりと活躍する人材の育成では、社外にオープンイノベーションのための研究団体を立ち上げるなど、さまざまな取り組みでDXに関わる人材も育成している。

 富山氏は、「グループ全体としては、POSや基幹システムをクラウド化し、柔軟に使える基盤を構築したほか、店舗オペレーションの改善やAIカメラを使ったマーケティングの強化、人材育成などの戦略で、DXを推進しています」と話している。

経営のやりたいが実現できるサツドラPOS

 GRIT WORKSは、サツドラ用に構築したクラウドPOSを製品化し、外販することで、チェーンストアのデファクトスタンダードを目指している。クラウドベースであることから、ハードウェアから脱却できるほか、リアルタイム性を生かした業務改善やマーケティング展開が可能。すでに、50店舗以上を展開するホームセンターやファストフード店、500店舗以上を展開する外食チェーンなどに採用されている。

 ベースとなったサツドラPOSは、「経営のやりたいが実現できるシステム」をコンセプトに開発されている。開発の背景としては、EZOCAと呼ばれる地域共通ポイントカードを導入するときに、既存のPOSに対応するためには、数年の工数と数千万円のコストがかかることが背景にあった。これがボトルネックとなり、DXが進まないことが大きな課題だった。

 富山氏は、「開発がスタートした2013年ごろは、クラウドの黎明期で、飲食業や小売業などの業務システムにはまだ利用されていませんでした。事例は少なかったのですが、工数やコストの面から考えても、オンプレミスではなくクラウドで実現することの方がメリットは大きいと判断しました」と話す。

 プロジェクトの開始から、約半年後の2014年12月には、まずは実験店をサツドラPOSに移行。2015年5月には、全店舗約600台の既存POSの移行を完了し、6月にはEZOCAの運用も開始できた。その後、現在に至るまで、免税対応や電子マネー対応、各種ポイント連携など、さまざまな機能強化、機能拡張を繰り返しているが、変化に柔軟かつ迅速に対応できるPOS基盤を実現している。

 「ベースがソフトウェアなので、ハードウェアに依存することなく、さまざまなPOS環境に対応できることが最大の特長です。また、Webアプリの内製化により、UI/UXを業務に最適化していることも特長の1つです。現在、サツドラPOSと一気通貫でつながる基幹システムも開発中で、2021年には本格稼働する予定です」(富山氏)。

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