第2の習慣 組織のことを考える:ドラッカーが教える成果をあげる人の8つの習慣(1/2 ページ)
成果をあげる上司が身に付けている習慣は「部下になされるべきことを考えさせること」。上司は、成果をあげるために何から何まで指示をすることはできないからだ。
成果をあげる上司が身に付けている習慣
今回のテーマは、成果をあげる人の第2の習慣「組織のことを考える」だ。
「ここでは、責任者は私である。しかし部下がジャングルで敵と遭遇し、どうしてよいか分からなくとも、何もしてやれない。私の仕事は、そうした場合どうしたらよいかをあらかじめ教えておくことだ。実際どうするかは状況次第だ。その状況は彼らにしか判断できない。責任は私にある。だが、どうするかを決めるのは、その場にいる者だけだ」。
これは、米軍の特別部隊の上官がインタビューに応えた時のものである。この事例は軍の組織だが、企業の組織も「どうするかを決めるのは、その場にいる部下だけだ」という状況に直面することはゼロではない。前回は、第1の習慣として、「なされるべきことを考える」を解説した。成果をあげる上司が身に付けている習慣は、前述した事例のように「部下になされるべきことを考えさせること」だ。上司は、成果をあげるために何から何まで指示をすることはできないからだ。
常に関心は内側に向けられる
会社は組織である。組織には必ず責任者がいる。会社の責任者のことを会社法では取締役と言う。何人かいる取締役を代表して、全責任を担ってトップに立つ人が代表取締役だ。取締役は、株主から会社の経営を任されている立場にある。取締役の関心は株主に引っ張られやすい。
会社は事業を進めるため、例えば、開発部、製造部、営業部、人事部、経理部といったように、さまざまな部署がある。それぞれの部署は何らかの形で、お互いに関わりながら組織として動いている。
また、組織として円滑な指示系統を保つために、例えば、事業部長、本部長、部長、課長、係長といったように、さまざまな責任を担う役職がある。さらに、会社は一定の秩序を保つために、規定やルールがあり、従業員は評価の目にさらされている。従って、従業員の関心は常に組織の内側に向けられがちだ。
組織が組織として機能するためには意思の伝達が必要だ。部署と部署が力を合わせて機能するためには情報の共有が必要だ。そして、人と人が力を合わせて成果をあげるためには、意思の疎通が必要だ。そのために、部門内での打ち合わせや、部門間の会議がある。従業員の労力は、人との関わりに多くの労力を消耗する。会社は、働く人の関心を常に内部に向けられる構図になっている。
都合を考えると成果はあがらなくなる
会社は成果をあげるために存在している。事業を通じて社会の役に立つからこそ、その存在を許されている。法律上、会社の持ち主は株主である。従って、経営者が株主の考えを尊重することは当然だ。しかし、「株主の意見に耳を傾けること」と「株主に経営判断を委ねること」はまったく違う。経営者が、株主にとって都合のよいことで経営判断をすれば、会社は思いも寄らない方向へ進んでしまう。さらに、部門の責任者が、自分の部門の都合だけを主張すれば、部門間に対立が起こり成果はあがらない。
会社の成果は3つある。売上、企業価値向上、人材育成だ。どれか1つでも欠けば会社は死んでしまう。株主にとって都合のいいこと、役員にとって都合のいいこと、自分の部門にとって都合のいいことで物事を考え、何かが決定されてしまえば、必ず間違いが起こる。売上は上がらなくなり、会社の価値は下がり、人材は育たなくなる。そんな結果は絶対に避けなければならない。
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