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第2の習慣 組織のことを考えるドラッカーが教える成果をあげる人の8つの習慣(2/2 ページ)

成果をあげる上司が身に付けている習慣は「部下になされるべきことを考えさせること」。上司は、成果をあげるために何から何まで指示をすることはできないからだ。

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組織にとってよいことは何かを考える

 成果をあげるために、私たちは、どんな習慣を身に付ければいいのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

成果をあげるために身に付けるべき第2の習慣、第1のものに劣らず大切な習慣が、組織にとってよいことは何かを考えることである。株主、従業員、役員のためによいことは何かを考えるのではない。もちろん、株主、従業員、役員は支持を得、あるいは、同意を得るべき重要なステークスホルダー(関係当事者)である。しかし、そもそも組織としての会社にとってよいことでないかぎり、他のいかなるステークスホルダーにとってよいこととはなりえない。

ピーター・ドラッカー

 組織にとってよいことを考えるとは、自分のことは考えないということだ。自部門の都合を考えないということである。組織全体に立って考え、組織全体に立って発言し、組織全体に立った決定をしよう、ということだ。

間違った決定をくださないために

 ある企業で役員の皆さんにドラッカーの研修をした。研修は1年かけて月に1回行うペースで進めていた。研修が中盤に差し掛かかった頃、社長が株主から解任された。社長は何か間違いをしたわけではない。売上の向上、企業価値の向上、人材の育成に力を注いでいた。組織にとってよいことは何かを考えたうえで仕事に専念していた。

 株主は、新しい社長を送り込んできた。人材育成に使うお金も無駄遣いという極端な考えに陥っていた。とにもかくにも、外に出ていくお金をゼロにしようと考え、必要なものまでもがコストカットの対象となり、人材育成を目的とした研修は中断となった。従業員は、株主の言いなりでしかない新任の社長に幻滅し、士気は下がった。売上は上がらなくなり、会社の魅力はなくなった。就職希望者も減った。結局、株主から送り込まれた新任の社長は、何の成果もあげられなかった。ただ、株主の言いなりになっているだけだった。

 保身に走り自分たちにとってよいことを考える。あるいは、責任を忘れて株主にとってよいことを考える。責任ある立場の人が、間違った決定を下せば、組織は急速に衰退していく。 その恐ろしさを身をもって知った。会社にとってよいことでないかぎり、株主、従業員、役員にとってよいこととはなりえない。ドラッカーの言葉が胸をえぐった。

組織の繁栄に責任をもつエグゼクティブ

 間違った決定をくださないために、そして、成果をあげるために何を考えなければならないのだろうか。

 ドラッカーはこう言っている。

成果をあげるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔を上げ目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に捉える。

ピーター・ドラッカー

 成果をあげる人は、「組織にとってよいことは何か」という視点で考えなければならない。最後に、次のブランクにあなたの答えを入れてほしい。成果をあげる人はそれを習慣にしている。

 私の組織にとってよいことで、私が行動に移すべきことは

____________________________________である。

(参考文献:次の書籍の中から一部引用させていただいた。『経営者の条件』)

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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