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第1回:スモールハピネスを毎日味わおう「である」幸せから「する」幸せへ仕事と自分を成長させる新しいキーワード「スモール・ハピネス」(2/2 ページ)

限られた人がたまにしか味わえない幸せから、誰でも毎日味わえるスモールハピネスへの切り替えを提案する。

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スモールハピネスをつかむためのインタビューの概要紹介

 「である」幸せでは、「幸せとは何か」のような哲学的な議論が重要になりますが、「する」幸せでは、実際の事例を参考にして自分で試してみることが有効なアプローチとなります。本コラムでは、私がインタビューしながら集めている身近な事例の中から代表的で参考になりそうなものを紹介し、読者がそれらを読みながら自分だったらどうするか、と考えて試してスモールハピネスを味わうことをねらいます。

 事例を集めるために、1対1でリモートで30分のインタビューを行っていますが、そのインタビューでのやりとりが、スモールハピネスに気付くガイドにもなっているので、その概要を紹介します。

質問1:今までの人生で「幸せ」を感じたときは、いつ頃で、どんな内容ですか?

 初対面で、リモートで、ほとんどアイスブレークもせずにいきなり私からこの質問をします。少しとまどうことを想定した質問なのですが、2、3割の人からはすぐに答えが返ってきます。他方、インタビューの受け手側に、私の想定通りのとまどいがあれば次の質問をします。

質問2:他の人はハッピイだとはいわないようなことでも、自分にとってちょっとうれしかったことや、いい気持ちになったことはありますか? ずっと昔でもごく最近でもいいです。例えば、何かがおいしかったとか、仕事がはやく片付いたとか、誰かから喜ばれたとか…。

 この補助的質問で、さらに5、6割の人が何か答えてくれます。それでも答えがでない人が1、2割はいます。私のようにずっとパフォーマンス優先で生きてきて、ハピネスなど改めて考えたことはない人たちでしょうか。その場合は深追いせず、私から、スモールハピネスのとらえ方について、次の図を見せながら、3〜4分の簡単な説明を行います。


スモールハピネスメソッド

[説明]

 スモールハピネスが生まれるプロセスを、ジグソーパズルを例として説明します。

 (0)〜(1)ばらばらのピースを全てつなげて、完成形の絵をつくります。

 (2)パズルが完成すると「できた!」とポジティブな感情が生じます。

 (3)(2)の感情をスモール・ハピネスだと認めます(一種のルールです)。

 ジグソーパズルでは「ピース」と「ピース」を「つなぐ」作業を続けていって、「パタン」が完成したら「できた」と感じるようになっています。ここで、「ピース」を「つなぐ」の替わりに、「情報」や「人」を「つなぐ」ことを考えます。情報と情報をつなげて意味をつくるとか、人と人をつなげて関係をつくるとかです。

 このように、何かと何かをつなげることは日常的に行っていることですが、普通はただ行っています。ここで改めて「つなぐ」ことを意識し、つながりが成立したときに生じる「できた」感をしっかり捉えて、すかさず「スモールハピネス誕生」と自分で認定するというのがスモールハピネスを生み出す作法です。その象徴的な例としてジグソーパズルをあげました。

 「つながりができた」という感情にスモールハピネスと名前を付けるというルールは唐突かもしれませんが、そもそも、人がもつさまざまな「感情」は、幼少期に周りの人たちから教えてもらったもので、このルールは大人に対して新しい感情(スモール・ハピネス)を教える機能を果たします。(1)(2)(3)の流れに慣れることで、スモールハピネスという感情が自然に生まれるように自分を調教していきます。

 以上の説明の後、次の質問をします。

質問3:今の説明をきいて何か思い当たることがありますか。スモールハピネスに関係していてもしていなくてもかまいません。

 ここまでくると、これまでこの方式でインタビューした人は漏れなくスモールハピネスの例を話してくれています(30人ほどで年齢は20代から60代で男女半々くらいで職種は多様)。

 「学生時代に打ち込んだバンド活動では毎日スモールハピネスを味わったが就職してからはあまり味わっていない」とか、「コロナ禍で子供と過ごしていると、子供が毎日必ずハピネスを味わっていることを教えられる」とか、「自分の仕事のレベルはまだまだだが、初めての職場の体験が興味深く、日々スモールハピネスを感じている」とか、「残業の毎日ですが、スモールハピネスの概念を知ると、スモールハピネスなのかなと感じるところがあります」など人それぞれの興味深い例があります。次回以降、事例を詳しく紹介していきます。

著者プロフィール:キャメル・ヤマモト

本名、山本成一。学芸大学付属高校卒、東京大学法学部卒業後、外務省に入省。エジプトと英国留学、サウジアラビア駐在等を経て、人材・組織コンサルタントに転身。外資系コンサルティング企業3社を経て独立する。専門は企業組織・人材のグローバル化・デジタル化プロジェクト。

また、ビジネスブレークスルー大学と東京工業大学大学院でリーダーシップ論の講義を担当。人材・組織論を中心に20冊余りの著作がある。近著は『破壊的新時代の独習力』(日本経済新聞出版)


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