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ANAがヒアラブル端末を空港スタッフに導入、期待を超える体験を模索(1/2 ページ)

コロナ禍で業績悪化に苦しむ航空業界だが、ANAではむしろDX推進のアクセルを踏み込んでいる。新しい成功モデルを模索する中、DXの取り組みが同社の体質を強くしているからだという。その一例が、空港スタッフへのヒアラブル端末の展開だ。

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ANA 野村泰一イノベーション推進部長

 「ANAではデジタルテクノロジーを活用することでコストを抑えながらも現場の業務はよりよくなっている。コロナ禍で新しい成功モデルを模索する中、DXの取り組みは、ANAを筋肉質に変え、カラダを強くしている」と話すのは、全日本空輸(ANA)のDXをけん引する野村泰一イノベーション推進部長だ。

 ご存じのように航空業界は、COVID-19の世界的な感染拡大の直撃を受け、旅客数の激減と業績悪化に苦しんでいる。旅客数がコロナ以前の水準に回復するのは2024年以降という厳しい予測もある。ANAでも大型旅客機の早期退役を進めるなど、さまざまな策を講じて経営の改善に取り組んできた。雇用を守るべく実施された、ほかの企業や自治体への大規模な出向も報道で伝えられており、記憶にも新しい。当然ながら従来型の大規模なシステム開発案件は止まっているが、DXの取り組みはコロナ禍にあっても、むしろアクセルが踏み込まれているという。その一例が、空港スタッフへのヒアラブル端末の展開だ。

課題があった無線機をIT部門が取り組む

 ANAでは2019年5月、ハワイ路線に大型旅客機エアバスA380をいち早く導入しているが、総二階建てという構造上、客室乗務員同士のコミュニケーションをどう円滑化するかが課題として浮上、耳に装着するヒアラブル端末「BONX Grip」を試験的に導入していた。「雪山で、滑りながら話したい」という想い(GoProにも通じる遊び心)から誕生したというBONX Gripは、スマホとBluetoothで接続し、アプリを介してグループ単位でクリアに会話できるのが特徴だ。

 一方、地上でもコミュニケーションの課題は似通っていた。安全運航の一翼を担っている空港スタッフ同士のコミュニケーションはこれまで無線機によって支えられてきたが、「よく聞き取れなかったり、聞き返しにくい」「手がふさがってしまう」「柔軟にグループが組みにくい」などの課題は放置されたままだった。何よりも無線機はIT部門がデザインに関わる領域という認識がなかったからだ。

 折しも、基幹の予約システムや顧客システムからお客さま情報を適宜活用することができる 「CX(Customer Experience)基盤」を核とした、カスタマージャーニー改善のための仮説検証サイクルが整ったのに合わせ、満を持して2020年4月から全ての空港スタッフにもタブレットの展開が始まることが決まる。

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