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エグゼクティブは『ストーリーでわかる「起業の科学」』をこう読むビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

これまでのやり方で成功してきた人は、今までのやり方の最適化、改善で成果を上げて、今の地位を獲得したが、新規事業は既存事業からのバイアスに影響されずにゼロベースで考えていく必要ある。

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 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。



『ストーリーでわかる「起業の科学」』

 『ストーリーでわかる「起業の科学」』は、難解ともいわれる『起業の科学』を、より広く読んでもらえるように、ストーリー仕立てにしました。

 想定しているのは、2種類の読者です。まずは主人公の山田さん。新規事業を起案して進める人です。そしてもう1人がサブキャラクターの佐藤部長で、新規事業を承認したり、評価したり、サポートしたりする人です。

新規事業をつぶすものとは?

 日本の新規事業がなかなか立ち上がらない理由は、起案者側に知見がないという問題は当然ありますが、エグゼクティブつまり評価する側に網羅的な知見や視点がないからでもあります。ただ、エグゼクティブに新規事業の知見や視点がないのは仕方ないことかもしれません。現在のエグゼクティブは、既存事業の中で成果を上げて今のポジションを得たケースが多いからです。

 ただ、エグゼクティブと一言でいっても、ソフトバンクの孫正義さんのような創業者タイプ、自分のいる企業が買収されてエグゼクティブになった人など、さまざまなタイプがいますが、本書が想定するエグゼクティブは、新卒もしくは中途で入社した会社で10年、20年、コア事業をがんばってきて、そこで認められて役職を獲得した人です。

 このような人には、既存事業における成功体験があります。しかし、この成功体験こそが、実は新規をつぶす要因になってしまうのです。

 新規事業やイノベーションというのは、既存の考え方や常識を相対化して再定義することや、アップデートすることに他なりません。

 しかし、これまでのやり方で成功してきた人は、今までのやり方の最適化、改善、歩留まりをよくするなどをずっとやってきたからこそ、成果を上げて、今の地位を獲得したのです。新規事業は既存事業からのバイアスに影響されずにゼロベースで考えていく必要あります。

新規事業の「顧客」は誰か?

 新規事業においては、顧客視点を持つことが最も大切です。しかし、新規事業でターゲットとなる顧客は、過去に獲得した現在の主要な顧客ではない可能性が高いでしょう。エグゼクティブは、そういった現在の主要な顧客に対してうまくやったからこそ、評価されたケースが多く見受けられます。しかし、新規事業においては、どこの市場から狙うかというときに、初期ユーザーを見つけるのが重要ですが、そういった現在の顧客がこれに当てはまらないことが非常に多いのです。

 つまり、本業の考え方だけで捉えてしまうと、新規事業はうまくいきません。

 本書の最初の方で山田さんが失敗してしまいますが、山田さんだけではなく、エグゼクティブメンバーの皆さんも、取りあえず山田さんのようにひらめいた表面的なアイデアに飛びついてしまい、「なんかうまくいきそうだ」ということを行動に移してしまいがちですが、そこには「顧客軸を深掘り」していなかった、ということがよくあります。

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