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動き出したモビリティの世界での水平分業型ビジネス(1/2 ページ)

機能・役割の広がりとともに、ビジネスとしてモビリティを捉えた時にも変化が生じてきている。モビリティを取り巻く5つのエコシステムとは。

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モビリティを取り巻く5つのエコシステム

 「CASE」は100年に1度といわれるモビリティの大変革を表す象徴的なキーワードとしていろいろなところで表現されている。背景にはテクノロジーの進化があることは言うまでもない。結果、ヒトの移動やモノの運搬における手段にすぎなかったモビリティの機能・役割が、大きく広がってきている。

 機能・役割の広がりとともに、ビジネスとしてモビリティを捉えた時にも変化が生じてきている。従来は企画・開発・製造・販売・アフターサービスを一連のバリューチェーンとして捉え、自動車OEMを頂点にサプライヤーや販売店が役割分担を行うという、モビリティを主語にした戦い方であった。

 しかし、ADASの進化、電池ビジネス(BaaS)、住宅との電力のやりとり、キッチンや仕事場になる車室空間作り等、これまでのモビリティにない機能が追加される中、モビリティを主語でない、異なる切り口をエコシステムとして捉えてビジネスを行うプレイヤーが登場している。そして、モビリティはそれらのエコシステムの一部として捉えられようとしている。このような考え方を2021年のスタディーで紹介した。


モビリティを取り巻くのは5つのエコシステム

既に動き出した3つの戦い方

 5つのエコシステムを切り口としたビジネスは既に動きだしている。従来は自動車OEMがモビリティのブランドを持ち、サプライヤーから部品を調達しながら企画・開発を主導し、顧客接点作りも主導していた。しかし、新たなプレイヤーがモビリティの企画・開発を行い、水平分業をしながらモビリティを世に送り出すビジネスが始まっている。

 このような新しいビジネスの動きにおいて、業界プレイヤーの戦い方は3パターンある。

(1)エンドユーザー価値を起点にモビリティを企画するプレイヤー

(2)標準・汎用シャシーを供給しスケールを狙うプレイヤー

(3)モビリティを適用先の1つとして特定モジュールでとがるプレイヤー


水平分業でモビリティが作られる中、そのなかで3パターンの戦い方が見えてくる

(1)エンドユーザー価値を起点にモビリティを企画するプレイヤー

 エンドユーザーとの接点を持つプレイヤーが、新たな接点の持ち方としてモビリティ領域に進出し、モビリティの企画・開発を主導する動きである。

 具体例としてSONYが分かり易いだろう。SONYは多様なコンテンツを持ち、多様なデバイスを通じてエンドユーザーに届けてきた。届ける際のデバイスはゲーム機でもaiboでもよく、その新しいデバイスの1つとしてモビリティを選んだ。よって、モビリティをワンショットで販売して終わりではなく、エンドユーザーに対して、モビリティを通じて多様なコンテンツを届け、アップデートしていくことでマネタイズする。一方、走る・曲がる・止まるを担うシャシーなどSONYとしてケーパビリティを持たない部分は、自動車サプライヤーのMagnaと協業するなど、水平分業を活用したモビリティ作りを行っている。

 ベトナムのVinfastでも同じことがいえる。Vinfastは2022年のCESでEV5モデルを発表した。ブランドはVinfastであるが、シャシーはMagnaとの協業であり、ADASはZFと協業するなど、自らが持たないケーパビリティはうまく自動車サプライヤーと分担しながら、Vinfastというモビリティを作り上げている。

 それは、Fiskerでも同様であり、メディアに登場するApple Carも同じように捉えれば間違いないだろう。

(2)標準・汎用シャシーを供給しスケールを狙うプレイヤー

 視点を変え、パターン(1)で登場したMagnaを主語にビジネスを語ってみよう。Magnaは自動車メガサプライヤーであり、ボディー、パワートレイン、エクステリア、シート、エレクトロニクスなどをカバーしている。さらに、自動車OEMから完成車製造の受託も受けている。つまりモビリティについて多岐にわたるケーパビリティを保有している。

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