第1回 売上づくりに迷走しないために「地図」を持て:「売上の地図」に学ぶ、売上づくりの極意(1/2 ページ)
売れた理由、そして売れなかった理由は、商品力、価格、配荷力、ブランド力、広告やプロモーション、PR、販売促進、バズ、クチコミ、インフルエンサー、競合の存在や景気と、いろいろありそうだ。何が本当で、何がうそなのだろう?
「CMが良かったから売れた!」「商品が悪くて売れなかった」など、売上の好調・不調の要因を言い当てる会話はマーケターに限らずそこらじゅうで繰り広げられている。売れた理由、そして売れなかった理由は、商品力、価格、配荷力、ブランド力、広告やプロモーション、PR、販売促進、バズ、クチコミ、インフルエンサー、競合の存在や景気と、いろいろありそうだ。何が本当で、何がうそなのだろう?
ほとんどの社員は、売上を作るために日々一生懸命仕事に打ち込んでいる。しかし思ったように売上が上がらない。ヒットを出すことができない。たまにヒット商品が出たり、想定以上の売上が上がったりすることがあるものの、偶然性が高く再現性が低い……。
売れた原因・売れない原因が分からない
分かりやすく考えるため、街のベーカリーショップの売上に影響を与えている要因で考えてみよう。
- 味の良さ
- 地域住民のニーズに合った商品の品ぞろえ
- 適度な店頭在庫(売り切れが多いと再来店が減る)
- 手ごろな価格
- 来店しやすい立地
- 分かりやすい看板
- 開放感の高い外観と適切な照明
- 駐車場の有無や駐車のしやすさ
- 店舗の清潔さ
- 気持ちの良い店員の対応
- チラシやダイレクトメール
- スタンプカード
- LINEやTwitterやInstagram活用
- Googleマップや食べログにおける高評価のクチコミ
- 雑誌やWebメディアでのPR露出
- 競合店舗が少なく遠い(商圏が狭いので距離が離れていればOK)
- 晴れが多い天候(雨だと客足が減る)
- 最適な気温(暑すぎるとパンは売れなくなる)
他にもいろいろあるだろうが、大きな影響要因としてはこんなところだろう。このように、街のベーカリーショップの売上でもこれだけの変数が影響を与えていることが分かる。売上は「○○したから売れた!」「○○が失敗したから売れなかった」と断ずることができるほど単純なものではないのだ。
大企業における売上の分かりにくさ
売上に影響を与える要因の数が少ない中小企業ならば、売上が上がったとき、もしくは思うように売上が上がらないとき、何が要因なのか、原因を特定することが比較的容易にできるだろう。原因が特定できれば、売上が上がった要因を強化し、売上が上がらない要因を改善する努力をすればよい。原因特定→改善・強化するための施策の流れが、シンプルだ。
しかし、大企業になると話はまったく別である。長い歴史がある。ブランドがある。商品点数が多く、過去に商品を購入した膨大な数の顧客の良い記憶も悪い記憶もある。ロングセラーの定番商品だけでなく、ひっきりなしに新商品が発売され、多くの広告やPRや販売促進施策が同時に展開される。競合も多く、強い。
知らなければ買ってもらえないため、認知度を向上させるためにテレビCMやネット広告を打つ。知っていても興味を持たれなければ買ってもらえないので、記事タイアップやコンテンツマーケティングによって興味を喚起する。
興味があってもどんな商品なのか分からなければ買ってもらえないので、理解を促進するためにブランドサイトをつくって商品の特徴をアピールする。商品特徴を理解していても好きじゃなければ買ってもらえないので、好意度を上げるために好感度が高いタレントや芸能人をテレビCMに起用したり、自社の社会貢献活動をアピールするための企業広報に力を入れたりする。
買いたくても店舗に商品が置いていなければ買ってもらえないので、 量販店の棚に置いてもらえるよう、小売本部のバイヤーや全国津々浦々の店舗へ営業活動をする。商品を置いてもらう棚も、位置や高さ、陳列数によって売上が変わるため、小売店舗の52週マーチャンダイジング(MD)計画に沿って、きめ細かな提案営業を行う。さらに購入の最後のひと押しをするために、エンド陳列や値引きなどのインストアプロモーションを実施する。それらに合わせて、店頭価格も目まぐるしく変わる。
試しに買ってもらえても、気に入らなければ次は買ってもらえないため、商品開発や改良にも力を入れる。そしてそのための技術開発にも多額の研究開発費を投じる。お客さまからの問い合わせに丁寧に対応するため、巨大なコールセンターを持つ外部ベンダーに顧客相談窓口業務をアウトソーシングする。一方で、自社がどんなに努力をしたとしても、競合がそれ以上の経営努力をして成果を上げれば、相対的に負けてしまう。景気や世界情勢が悪ければ思ったほど売れないし、天気や気温によっても売上は上下動する。 さて、どうやって売れた原因(売れなかった原因)を特定することができるだろうか?
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