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第1回 売上づくりに迷走しないために「地図」を持て「売上の地図」に学ぶ、売上づくりの極意(2/2 ページ)

売れた理由、そして売れなかった理由は、商品力、価格、配荷力、ブランド力、広告やプロモーション、PR、販売促進、バズ、クチコミ、インフルエンサー、競合の存在や景気と、いろいろありそうだ。何が本当で、何がうそなのだろう?

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売上に影響を与えている変数

 このように、大企業の売上には、数多くの要因が絡んでいる。そして、売上を上げるために、各社、複数の部署が数多くの施策を同時に講じている。

 大企業の売上は、膨大な数の変数が影響を与えている。これが、大企業のマーケティング効果測定やROI検証を難しくしている要因である。しかし、よく分からないから効果測定しない(できない)では済まされないため、各社、広告やPR、販売促進がどのくらい売上向上に寄与したのか、定量的に計測しようと努力をしている。

 一方、こんな笑い話を聞いたことがある。

 ある会社の事業責任者が、事業部や宣伝部、マーケティング部など各部署から報告を受けた。各部門長は、当該年度に行った新商品や広告が 全て「当たった」ことを誇らしく、定量データで報告したが、事業責任者は眉をほそめてこう言った。

 「おかしいな......、君たちの報告が本当なら、わが社の売上は3倍になるはずだ」

 このように、各社、事業部、広告宣伝部、マーケティング部などが、自分たちの努力や施策が売上を向上させたことを過大に評価し、報告をする傾向がある。そのため、全体を評価し、予算を配分する事業責任者は、何が効いて何が効いてないのか、分からない状況が続いてしまう。

売上の地図

 私がまとめた「売上に影響を与える変数の構造図=売上の地図」では、20個(正確には効果測定を除く19個)の変数を取り上げている。これらはそれぞれが単独で存在・機能しているのではなく、相互に関連しあって売上に影響を与えている。


売上の地図

 地図さえあれば、もう大丈夫。目的地に対して、自分が今どこにいるのか。どこが良くて、どこが悪いのか。どういう最短ルートで目的地に到着できそうなのか。筋の良い作戦を練ることができるようになるだろう。

 私は20年以上に渡り、大企業の宣伝・広報・マーケティングの支援に従事してきた。また、Web2.0という流行語が生まれた2005年から17年にわたってソーシャルメディアという「消費者に一番近い場所」でマーケティング業務に従事してきた経験を通して、「売上」つまり「お客さまに買いたいと思ってもらうこと」「買っていただくこと」を促す活動には、ものすごく多くの要因がそれぞれ相互に影響しあいながら効いたり、効かなかったりしていることを痛烈に思い知らされてきた。

 売上の地図は、「◯◯をすれば誰でも簡単に今日から売れるようになる!」というインスタントなノウハウを提供するものではない。むしろ、世の中にはそんな都合の良い魔法のつえなど存在しないことを理解し、限られた資源(予算)で売上や利益を最大にする「再現可能な作戦」を立てる道具なのだ。

 売上の地図の目的はあくまで「売上に影響を与える要因の全体像をざっくり把握すること」である。次回から重要な変数を2つ取り上げ、解説をしていく。

著者プロフィール:池田紀行(いけだ のりゆき)

株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長

1973年横浜出身。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手クライアントのソーシャルメディアマーケティングや熱狂ブランド戦略を支援する。日本マーケティング協会マーケティングマスターコース、宣伝会議講師。著書に、『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『キズナのマーケティング』『ソーシャルインフルエンス』(アスキー・メディアワークス)など著書・共著書多数。


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