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第5回:役員にすべき人は、「全社最適視点」と「現場部分最適」の間を往復運動できる「四天王」型人材マネジメント力を科学する(1/2 ページ)

四天王がカバーしている力は、これから経営陣を務める人に持っておいてほしい。

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 エグゼクティブの皆さまが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。ここまで当社(経営者JP)主催のオンライントークライブでプリンシプル・コンサルティング・グループ代表の秋山進さんと当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容からお届けしてきましたが(2022年1月27日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:経営者・役員になれる人vsなれない人」)、今回はいよいよ、では「役員にすべき人」とは、どのような人かという話です。

社外取が決める役員候補の落とし穴

 社外取締役が主体となって意思決定を行う指名委員会が、社長や取締役の指名・選出決定、場合によっては執行役員層についても推薦者に対しての意見・承認を行う時代になりつつあります。

 その際に留意すべきことは、社外取締役は「全社最適」のみに引きずられがちで「空間支配力」の高い人に惑わされがちだという点です。このことについて、まずは解説してみましょう。

 秋山さんは、私たちが仕事をしていくうえで「信奉された価値」と「多数派の価値」があるといいます。


思考・行動特性

 「信奉された価値」とは、(理想的には)こうすべきだよね、こうあらねばならないよね、という価値観を現しており、いっぽう「多数派の価値」とは、でも現実としてはこうだよね、実際はこうするよねという価値観を現しています。皆さん、表を見ていかがでしょう。おおよそ多くの人たちは、この両者の間に立って日々仕事上の判断や行動を行っています。

 ここで考えるべきことは、社外取締役が外から見ると、表の左側「信奉された価値」に突出しているように見える人が、良く見えてしまうということについてです。

 問題は「信奉された価値」が強く見えている経営候補者が、右側「多数派の価値」〜本音のところ・マジョリティの価値がどう動いているかが分かっていて、その間をうまくつなげる技術を持っているかどうかが非常に大事なわけです。

 ここが欠けていると、言っていることは素晴らしいかもしれないけれども、実際の事業・現場を動かす力はない、ということになってしまうのです。

指名委員会での役員選出、“きれいな人”に偏り過ぎてはいないか?

 どうしても、外部の人は“きれいな人”を選んでしまう傾向にあります。

 ここで言う“きれいさ”とは、弁舌でさわやかにしゃべることができて、英語もうまく、ディスカッションをしたらバチバチと答えてくれる人です。そういう人を外部の人は選びたくなってしまう、それがある種、問題なのだと秋山さんは指摘します。これは前回、話の出た「空間支配力」の高い人ですね。

 「マネジメントの一番重要なところを知らない学者や会計系や法務系の偉い人が理屈の観点から社外取締役ばかりやっていると、会社がうまく回らなくなってしまう問題が起きると思います」と秋山さんは言います。

 社外取締役の盲点かもしれないですね。

 「空間支配力」は、現場を掌握したり会社全体を率いていったりするためには必要なことなのでいいんです。ただ、そのイメージだけでは会社は変わりませんし、本当の意味では動きません。

 ですから、そういう意味ではバイアスがかかることを社外取締役は認識した上で、空間支配力が強すぎる人については冷静にもう一度、資質面やファクトベースで、どういうふうにオペレーションに取り組むかを、ちゃんと見ていくことが大事なのですよね。

 最近着目されている「スキル・マトリクス」についても、そこを可視化することは良いことなのですが、外に説明できるかどうかのウエイトが少し高くなりすぎてしまっているので、そのへんを上手にやらないといけないなというのが、秋山さんと僕との対談での結論でした。

これからの経営幹部に求められる「四天王力」

 さて、実家がお寺でもあり仏像が好きの秋山さんが、ちょっと面白い話をしてくれました。

 これから求められる経営幹部は、仏教の「四天王」型である、と。

 四天王とは持国天、広目天、増長天、多聞天です。持国天は「自分の国を維持する」。広目天は「広く目を開く」。増長天は「増進する・強くする」「どんどん成果を収めていく」。多聞天は「話をよく聞く」。

 この四天王がカバーしている力は「これから経営陣を務める人は、だいたいこれぐらいのことは持っておいてくださいね」という視点的なものを表す意味では、かなりよくできているのです。

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