第5回:役員にすべき人は、「全社最適視点」と「現場部分最適」の間を往復運動できる「四天王」型人材:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
四天王がカバーしている力は、これから経営陣を務める人に持っておいてほしい。
持国天は外部変化に合わせて組織を維持するという、リスクマネジメント的・ディフェンス的視点を意味します。経営陣になる人は総じてアグレッシブな攻め型が多いですが、オフェンスだけしかできない人は、今は厳しい。特に経営陣というものは社内外さまざまなところから見られている立場なので、リスクマネジメント的な発想を持ってディフェンスも考えていかなければいけないのです。
広目天は、下界の新しく重要な情報を獲得し解釈する人です。実物の仏像を見ると分かりますが、ペン(筆)を持っています。「世の中の新しいことはどうなっているんだ?」というインテリジェンス的・未来的視点です。経営者の5つの力で言えば、「構想力(描く力)」に直結します。
増長天は、成長・成果を生む行動に挑戦して結果を出す。これは挑戦心があって、どんどんオフェンスしていけるかというポイントで、経営陣となる人には得意な科目ではないでしょうか。5つの力では「遂行力(やりきる力)」ですね。
多聞天は「人の話をよく聞く」。人の話をよく聞いて理解して、何が同じで何が違うのかをちゃんと整理して、さらに心理的なところもケアするという人なのだと秋山さんは解説します。
この「四天王力」、秋山さんは4つともを一定以上に持つ人でないと役員に上げてはいけないと言います。さて、皆さんの会社の役員はいかがでしょうか? あるいは皆さん自身は、どうでしょう?
社長にすべき人は、「お釈迦様」タイプ
さて、その四天王はお釈迦様を守っています。お釈迦様とは、その会社の中で最も重要な、パーパスや経営理念などを最も体現できる考え方・意思決定基準を持っていて、それがまったく揺るがない人です。社長、ですね。
その人に真ん中に入ってもらうと、周りの人がよく働く。
ある面、四天王として優秀な役員は、自身の強みがゆえのこだわりや偏りがある。その良さを殺いでしまうことは本人にとっても会社にとっても得策ではありません。
秋山さんは、役員にすべき人のなかから消去法的に外していった結果、社長が向いているとなる場合もあると言います。
場合によってはそんなに実績もなく、四天王力が(足切り基準はこえていなくてはだめですが)総じてさほど突出した高さがなくても、「揺るがない感」がすばらしいと周りの優秀な人が使えるので、そういう人にトップをお願いしたらいいのではないかという話を、以前コンサルティングした会社で話したそうです。
皆さんの会社ではどうでしょうか。社長のタイプ、役員陣のタイプ。もちろん、業態や企業ステージによっても、望ましいフォーメーションは変わってきますが、今回の話に出た観点で、
- <全社最適視点>と<現場部分最適>の間を往復運動できる人
- 「お釈迦様」タイプ、「四天王」タイプ
それぞれチェックしてみると良いのではないでしょうか。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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