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部下と組織の働きがいを醸成するコミュニケーションとマネジメント「働きがい心理学」ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(1/2 ページ)

組織として成果をあげていくために重要な、メンバー一人ひとりの「働きがい」。多様性の時代に、さまざまな個性を持つメンバーに働きがいを感じさせていくためにはどのようなコミュニケーションが必要なのだろうか。働きがい創造研究所の田岡英明氏に話を聞いた。

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働きがい創造研究所 取締役社長 田岡英明氏

 ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、働きがい創造研究所で取締役社長を務める田岡英明氏が登場。管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などの講師を務め、キャリアコンサルタントとして活動する田岡氏が、自身の著書『マネジメントのイライラが消える!実践「働きがい心理学」』の内容に基づき、講演した。

日本の従業員エンゲージメントは世界最低レベル


『マネジメントのイライラが消える! 実践「働きがい心理学」』(Amazon)

 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)に満ちた“VUCA”の時代といわれる現代。こんな不確実な時代だからこそ、管理職や経営層にとっては、部下やメンバーのモチベーションを上げていくことが重要となる。

 少子高齢化が進む現代では、労働者人口も減少化していく。さまざまな人材が活躍できるように女性活躍推進、障害者雇用、70歳定年制、LGBTQ+理解促進など、多様なメンバーが長く働き続けられる環境を作り出し、生産性を上げていく必要がある。

 しかし、現在、日本の労働生産性は、OECD加盟38カ国中28位といわれている。さらに、熱意あふれる従業員エンゲージメントの強い社員の割合は、たったの5%。129カ国中128位という非常に低い結果を記録している。

 「従業員エンゲージメント、メンバーのやる気を上げていくことが必要です。皆さんの職場のメンバーはいかがですか? 仕事をしているとき、メンバーの目、自身の目は輝いているか、考えてみてください」(田岡氏)

働きがいを向上させてエンゲージメントを上げていく

 では、エンゲージメントを上げていくにはどうすればよいのだろうか。昔は「給料をあげる」「出世させる」といった外発的動機付けで社員のモチベーションをあげることができたが、現在はそれだけでは若いメンバーは動かない。重要なのは「内発的動機」であり、内発的動機をベースとした自律型人材の育成が重要になる。

 「内発的動機付けとは、すなわち働きがいです。働きがいを持つことで、他者から管理・支配されるのではなく、“自分の立てた規律や規範にのっとって働ける人材”、“自ら仕事や役割を創り、周りを巻き込み、結果を出せる人材”となっていきます」(田岡氏)

 フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」によると、仕事に対するモチベーションをあげるためには「衛生要因」と「動機付け要因」という2つの要因がある。

 衛生要因とは、いわゆる働く環境や条件などのことだ。職場環境をよくし、給料を上げ、副業を許可する……。こういった対策をすることで、メンバーの「不満足」は減少する。

 もう1つの重要な要素が動機付け要因、すなわち働きがいだ。動機付け要因としては、仕事内容、責任、達成、承認などがある。

「衛生要因をよくすると不満足は減りますが、満足度は上がりません。満足を増やすには、責任のある仕事をやっているという実感や、周囲からの承認、成長実感などを得られる動機付け要因が重要です。これによって働きがいが感じられるようになり、満足が上がっていくのです」(田岡氏)

働きがいを感じるために覚えておきたい「自己重要感」と「成長実感」

 働きがいを上げていくために重要なのが、自己重要感(自他承認)と成長実感(成功体験、達成感)である。

 なかでも重要なのは、自己重要感だ。人は誰も自分のことを価値ある存在だと思いたい、他人からも自分のことを価値ある存在だと思ってもらいたいと考えている。深層心理には自分を認めてもらい、自分の存在価値を確かめたいという欲求がある。

 自己重要感を上げるために必要なのは「褒める」「認める」「ねぎらう」ことで関係を作ることだ。部下や周囲の人々の自己重要感を上げるには、その人の言葉を興味・関心を持って傾聴し、気付いたこと、感じたことを言葉で伝える習慣を持つことが重要になる。

成長実感のためのリフレクションと概念化

 自己重要感とともに、働きがい心理学において重要な要素が「成長実感」である。この成長を実感するために覚えておきたいのがデービッド・コルブの経験学習モデルにある「リフレクション(Reflective Observation)」と「概念化(Abstract Conceptualization)」だ。

 「仕事の経験を通して成長していくためにはリフレクション、つまりなぜこの仕事がうまくいったのか、なぜこの仕事が失敗したのかと内省する必要があります。リフレクションを行っていくことで、概念化ができてくる。この仕事にはこういう準備が必要だ、報連相をしないとうまく動かない、そういった概念化によって仕事のサイクルを能動的に実践できるようになり、成長を実感できるようになる。ある業務の後に、部下のリフレクションと概念化を手伝うことで、部下に成長を実感させることができ、結果的に彼らの働きがいにつながっていくはずです」(田岡氏)

部下と接するときにイライラ……。このイライラの正体は?

 部下をマネジメントする際に、どうしてもイライラしてしまうことはないだろうか。こんなとき、どのような心理が働いているのだろうか。

 「怒りは二次感情だと言われます。一次感情として期待を抱いていたのに、その期待が叶わないことでイライラし、怒りにつながっていきます。これを防ぐためには、自分と部下を比べないことが重要です。自分が若かった頃どうだったかを考え、一人ひとりのメンバーをしっかり見てあげてください」(田岡氏)

 現代は多様性の時代であり、これからはダイバーシティマネジメントが必要になる。全員が違う特性を持つなかで、一人ひとりを丁寧にマネジメントしていく、オーダーメイドマネジメントともいえる。

 まずは自分を理解する「自己理解」。その後に、部下を理解する「部下理解」。そうやって自分や部下への理解を深めることで「部下受容」ができ、部下の育成ができるようになる。そしてやっと組織成果を上げることができるようになるという。

 部下を理解し、受容し、育成する……。自分が楽になるように部下を育てていくことで、マネジメントのイライラも消えていくはずだ。

「人と組織に働きがいを育む」ためのアライメントと組織開発

 講演の最後に取り上げられたのが「人と組織に働きがいを育む」というテーマ。部下を成長させ成果をあげることが求められる管理職の参加者に向け、部下と組織の働きがいを育むために、働きがい心理学というフレームの中でできるポイントを教えてくれた。

 「思考や考え方というのは“自分はどんな人間なのか”というセルフイメージから生まれます。自分自身に対する理解がしっかりできていれば、思考のレベルが上がり、いい仕事につながって成果が上がります。逆に、いやいや仕事に取り組んでいると、セルフイメージも下がり、思考や言葉も低いものとなり、実績も上がりません」(田岡氏)

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