部下と組織の働きがいを醸成するコミュニケーションとマネジメント「働きがい心理学」:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
組織として成果をあげていくために重要な、メンバー一人ひとりの「働きがい」。多様性の時代に、さまざまな個性を持つメンバーに働きがいを感じさせていくためにはどのようなコミュニケーションが必要なのだろうか。働きがい創造研究所の田岡英明氏に話を聞いた。
上司(自身)の現状と働きがいを知る
まず、上司であるあなた自身が働きがいを感じるために、自己のアライメントをとり、自身がどのレベルで仕事をしているのか確認してみよう。
人間の意識を以下の6つの階層に分類した『ニューロ・ロジカル・レベル』に基づき、「社会システム(ビジョン)」「自己認識」「信念・価値観」「能力」「行動」「環境」という6つの階層からセルフイメージについて自己の認識を確認してみてほしい。セルフイメージが高ければ、各レベルの回答が一貫しているといわれている。
- 環境:今の仕事の現場はどのような環境ですか?
- 行動:今の環境の中でどのような行動を取っていますか?
- 能力:今の仕事の現場でどのような能力を発揮していますか?
- 信念・価値観:今の仕事で大切にしている事や拘りは何ですか?
- 自己認識:今の仕事で達成している自分の使命は何ですか?
- ビジョン:あなたが使命を果たすことで世の中はどのようになりますか?
一度、自身のビジョンや使命を確認し、自身の使命が果たされた先に、世の中がどんなによくなっていくか、自分の中で腹落ちできるはずだ。その後で、再度、同様の質問を逆からして、現状とのギャップを確認してほしい。
- 自己認識:今の仕事で達成したい自分の使命は何ですか?
- 信念・価値観:今の仕事で大切にしていきたい事や拘りは何ですか?
- 能力:今の仕事の現場でどのような能力を発揮したいですか?
- 行動:今の環境の中でどのような行動をしていきたいですか?
- 環境:今の仕事の現場をどのような環境にしたいですか?
この質問に対し、自身のビジョンの軸が通っていれば、前後の質問の答えは一致するはずだ。
部下の現状と働きがいを知る
自身のニューロ・ロジカル・レベルを確認した後は、部下がどのようなニューロ・ロジカル・レベルになれば働きがいを育めるのかを知っておきたい。とはいえ、深いコミュニケーションがなければ、部下のニューロ・ロジカル・レベルを知ることは難しいだろう。
「部下に対する無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)があると、部下のニューロ・ロジカル・レベルを正しく知ることはできません。アンコンシャス・バイアスを超えて部下をフラットに見ていかなければならない。そのためには日々のコミュニケーションの量と質をあげていくことが必要です」(田岡氏)
ニューロ・ロジカル・レベルを知るためには、部下と対話しながら「最近の仕事の状況」「仕事で大切にしている事」「入社動機や成功体験」「未来の目標」「自分に支援できること」という5つのストーリーを聞いてみるといい。対話を積み重ねながら、部下の成長実感と働きがいを育む必要がある。
「一度にでなくともよいので、これらのストーリーを聞いていくと、部下の強みや価値観、成長実感が分かってきます。部下の成長実感を育むためには、上司としては仕事を任せて、応援して、内省させることが重要です。任された仕事をやり遂げ、振り返ることで、先程のリフレクション、概念化などのデービッド・コルブの経験学習モデルを回させるようにしましょう」(田岡氏)
組織に働きがいの風土を作る
MIT教授のダニエル・キムは「組織の成功循環モデル」を提唱している。組織には「思考の質」「行動の質」「結果の質」「関係の質」という4つの質があるが、多くの組織は結果からバッドサイクルを回しているといわれている。
■バッドサイクル
1、成果が上がらない(結果の質)
2、対立・押し付け、命令する(関係の質)
3、面白くない、受?で聞くだけ(思考の質)
4、自発的・積極的に行動しない(行動の質)
5、さらに成果が上がらない(結果の質)
ダニエル・キムは関係の質から始まるグッドサイクルを回すように指摘している。
■グッドサイクル
1、お互いに尊重し、一緒に考える(関係の質)
2、気付きがある、面白い(思考の質)
3、自分で考え、自発的に行動する(行動の質)
4、成果が得られる(結果の質)
5、信頼関係が高まる(関係の質)
「組織で働きがいを育むためには、心理的安全性にもつながる関係の質から始めるサイクルを回すようにしましょう」(田岡氏)
個々を尊重しながら対話を深め、働きがいあふれる風土を醸成
南山大学の中村和彦教授によると、「組織開発とは、組織の健全さ、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である」というもの。
組織の風土づくり、組織開発には、「解決策が分からない」適応課題に対応し、ポジティブアプローチで対話を重ねていくことが重要となる。サーベイなどを活用しながら問題を見える化し、ガチ対話でお互いの問題の原因を探ってガス抜きを行い、夢を語る、未来づくりを実施するという対話が効果的だ。
田岡氏は、「メンバー一人ひとりの自己重要感と成長実感を育んでいくコミュニケーションが、“働きがいあふれる風土”を醸成していきます。個々として尊重されながら、目的に向かって社員たちが連携していくサークル型組織が、働きがいを育んでいくはずです」とまとめて講演を終えた。
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