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第15回:メンバーが「やる気」をなくす上司の10の言動。モチベーションアップの前に、社員の意欲低下を防ぐことこそが必要マネジメント力を科学する(1/2 ページ)

やる気が失われたり、モチベーションが下がる原因として、上司の問題と組織の問題がある。特に社員に当事者意識、主体性があるかないか。その差がすごく企業力格差を生んでいる。

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 エグゼクティブの皆さまが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。

 今回からは数回、自社のメンバーたちがどうすれば生き生きと働き、自ら動く組織となるのかについて、ベストセラー『こうして社員は、やる気を失っていく』の著者、株式会社モチベーションジャパン代表・松岡保昌さんと当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容からお届けします。(2022年7月21日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:社員のやる気を、こうして取り戻せ!」)

やる気とは全従業員の当事者意識、主体性

 今回から、「社員のやる気」をテーマに数回お届けします。本当に今、「社員の『やる気』が企業力格差を生んでいる」と感じます。

 松岡さんは2022年に『こうして社員は、やる気を失っていく』を上梓され、話題の書として版を重ねています。この本の中で松岡さんは、やる気が失われたり、モチベーションが下がる原因として、上司の問題と組織の問題があると提言しています。

 松岡さんは次のように話します。

 「“やる気”は言葉を変えると、主体性だったり当事者意識だったり、そういう言葉にも置き換えられるんですね。もちろんやる気のほうが広い概念を持っているんですけれども、特に社員に当事者意識、主体性があるかないか。その差がすごく企業力格差を生んでいます」

 なぜ企業力格差が生まれるのか。同じ業界でもコロナをなんとか生き延びたり、逆に伸びている会社もあれば、一方では苦しんでいる会社もあります。この企業力格差の1つとして、「変化適応力」がすごく重要な意味を持っている。だからコロナは、あらゆる企業が変化適応力があるかどうかを問われたタイミングともいえるのです。

 ここで当事者意識がない会社だと、どのような現象が起こるか。

 例えば変化の兆しとか要望は、現場で起こります。だから、企業の変化は2軸で考えなければいけません。

 1つは想定される変化。例えば「DXになりますよ」というのは、これは上(経営者)が考えるべきことです。世の中の流れは必ずそっち側に行きますよね。その世の中の流れ、変化を読んで取り組むこと。

 もう1つすごく大事なのが、現場で起こる変化です。分かりやすく言うと、お客さんから「こんなことできませんか?」という相談を必ず受けます。

 コロナでデリバリーが増えた際に、食材のパッケージについて「汁がこぼれないように完全密封になりませんか」という顧客からの要望が出る。当事者意識がない会社だと、現場が「ごめんなさい。うち、できないんですよ」と普通に答えてしまう。当事者意識がない会社は、他の部署も当事者意識がないから、「そういうのやりましょうよ」と気が付いても言うのも面倒くさくなっている。

 本当に怖い。情報が経営層に上がってこないだけで、現場で勝手に断っている。

 「一方、当事者意識が高い社員は“何に使うんですか”とか、“どうしてですか。うちはほとんどこぼれませんけど、これではダメですか”とか、そういう会話から“誰が運ぶか分からないんだよ”“どうやって運ぶのか分からない”“でもこぼれていたら大クレームになるからさ”みたいな話が広がる。そういう会話で“これはもしかしたらみんな思っているよな。じゃあ会社にすぐ言わなきゃ”と報告する。これで変化に対応する力がまったく変わるんです。このやる気の差は、経営者が知らないところで、かつて以上に企業力格差を生んでいる。これがすごく怖い」、そう松岡さんは言います。

 従業員が元気がないとか、やる気があまり出ていないという、モチベーションの側面の現象だけの問題ではない。雰囲気とか社風を超えて、企業のビジネスにもすごく影響していることが理解できるでしょう。

 特にこの数年、コロナになってからの経営者の悩みの多くは、「変化適応できる会社になりたい。過去からのパラダイムを変えられないし、過去の延長線上でみんな考えてしまう。どうしたらいいんだろう」経営者だけが危機感を持ち、それが社内にない。その「企業文化を変えてほしい」といった相談がいま今、すごく増えていると松岡さんは言います。

モチベーションを上げる努力はしているのに、下げない努力を怠っている

 松岡さんは『こうして社員は、やる気を失っていく』の中で、やる気が失われる原因として上司が及ぼす問題と組織が及ぼす問題の大きく2つの問題を挙げており、上司の悪影響編では代表的な10の問題を挙げています。

1、目を見て話さない。目を見て話せない

2、理由や背景を説明しない

3、一方通行の指示

4、コントロールできる部分を与えない

5、話を聞かずに結論を出す

6、意見も提案も受け入れない

7、言うことに一貫性がない

8、感覚だけで評価する

9、失敗を部下のせいにする

10、部下の仕事を横取りする

 皆さまは、この10の問題を見て、いかがでしょうか。ドキッとしいる人も、もしかしたらいるのではないでしょうか。あるいは皆さんの上司に当たる人について、該当する項目が複数あるかもしれません。

 そもそもなぜ松岡さんが『こうして社員はやる気を失っていく』というタイトルの本を執筆することになったのか。本のコンセプトを編集者と話していたときに、1つ松岡さんが言ったキーワードがあったそうです。

 それは、「どの会社もモチベーションを上げようという取り組みはすごくやるんだけど、本当はその一方で、日常の中で社員がやる気を失うようなことが、日々行われているんだよね」

 この松岡さんの嘆きの一言が、妙に編集者に刺さったとのこと。

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