第15回:メンバーが「やる気」をなくす上司の10の言動。モチベーションアップの前に、社員の意欲低下を防ぐことこそが必要:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
やる気が失われたり、モチベーションが下がる原因として、上司の問題と組織の問題がある。特に社員に当事者意識、主体性があるかないか。その差がすごく企業力格差を生んでいる。
確かに、モチベーションを上げる作業は絶対にやったほうがいい。でもその前に、モチベーションを下げないことにすごく価値がある、と。
「上司や会社が、社員のモチベーションを下げることをやっているのだけれども、本人たちが気が付いていないことが多いんですよ」(松岡さん)
上司は「あなた自身の行動を変えないといけないんだよ」ということに気が付いていない
『こうして社員はやる気を失っていく』の中には「こういう具体的なやりとりをメンバーとしているでしょ」という、あるあるの事例がたくさん紹介されています。筆者の松岡さんの思いとしては、これを読んで「もしかしたら私のことかも」と感じてくれればとのこと。
本を手に取った人が「自分は違う。どんなやつがいるんだろう」と読み進めているうちに「もしかして、これ、俺?」と思ってもらう仕掛けにすごく力を入れたそうです。
特に人事担当や経営に携わる人は、自社の上司陣に「あなた自身の行動を変えないといけないんだよ」ということを気付かせること自体が非常に難しい。だから、仕掛けをしないと自然には変わらないことを、すごく認識しないといけないことに気がついてほしい。これが松岡さんの大きなメッセージなのです。
モチベーションを上げるための施策に取り組む。なのに、現場の中でやっている日常の業務が、逆にブレーキになっている。せっかく研修などで、モチベーションを上げるために「こうだよね」と言って、その場では「そうだよね」となって取り組みはするけれども、現場の業務の中では、それに蓋をしてしまうようなことが行われている。
「目を見て話さない」のを、そもそも上司本人は悪いと思っていない。「ちゃんと話を聞いているよ」「耳はそっちだよ」と作業しながら聞いている。
「理由と背景を説明しない」も、本人は説明しているつもりなんだけれども、例えば管理職、経営者、それぞれの立ち位置によって、見えている景色は違う。それを上に立つと忘れてしまう。だから見えているものが違うのに、その詳しいことを言わずに、「これやっといて」「これ分かるだろ」という前提でやる。指示した側の期待値がここなのに、部下は見ている世界が違うから、その期待値に届かない。
「言うことに一貫性がない」は少し異なり、これは本人がいろいろ気が散ったりするケースもあるし、あるいはそもそものキャラクターもある。悪気なく新しいことに意識が行って、自分では変えているつもりはないんだけど、なんか日々言うことが変わるみたいな人。そこに起因することがあります。
もう1つ根深いのは、上が決めた理由や背景を、中間管理職層が理解していない。だから部下に聞かれた時も、場当たり的とは言わないけれども、その場しのぎで答えたりする。そんな中間管理職がいるから、指示に一貫性がないように見えるケースも非常に多くあります。
「失敗を部下のせいにする」というのは、恐怖政治の会社はそうなりがちだと松岡さんは指摘します。手柄は自分のもの。失敗は部下のせい。
「でも本当は部下の成果、つまり任されている組織を含めて自分の評価なんだけれども、それを忘れて保身に走るケースとか。皆さんも、「うちではないよ」と思うかもしれませんが、意外と起きていますよ」(松岡さん)
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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