第32回:若手にはないミドル・シニアの強みを活かすには?:マネジメント力を科学する(1/2 ページ)
自らがどんな付加価値を生んで、どんな稼ぐ力を身に付けたいのか。方向が決まったら、それに対して必要なスキルは何かを考えてみてほしい。
エグゼクティブの皆さんが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。
今回からは、ミドル・シニア層の転職が広まっている中でミドル・シニアが押さえておくべきキャリアと転職のトレンドについて、合同会社THS経営組織研究所 代表社員の小杉俊哉氏、株式会社ルーセントドアーズ代表取締役の黒田真行氏をゲストに迎え、当連載筆者の経営者JP代表・井上との鼎談の内容からお届けします。(2024年2月6日(火)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:どうなる? どうする? ミドル・シニアのキャリアと転職」)
リスキリングの流行が意味していること
昨今の人材関連のバズワードを拾ってみると、「リスキリング」「蛙化現象」「セルフブラック化」「エンゲージメント」「ウェルビーイング」「人的資本経営」などが挙げられます。
中でも特に出現率が高いのが「リスキリング」ですが、これまでの経験やスキルでは時代にキャッチアップできなくなった従業員を、企業側がどうリスキリングするのかという文脈で語られています。日経もオンラインメディアをリニューアルして「NIKKEIリスキリング」をスタートさせました。
黒田さんは、従業員主体の言葉というよりは「経営側がやるべきもの」みたいなニュアンスで使われることが多かったところが気になると言います。
この手のバズワードは、よく研修会社の営業ツールになりがちで、「今はリスキリングですよね」と人事や研修会社で流行る、というか、流行らせているところがあるのは事実です。ぜひ踊らされないようにしてください。
そもそもリスキリングと言ってるけれども、実態は「リ」ではなく、今のスキルに付加する「アップスキリング」であったりすることも多く見受けられます。そのこと自体はとても大事なことで、要するに言葉に踊らされないようにすることが大事です。
ぬるま湯な職場を辞めて「セルフブラック化」しようとする若手社員たち
コロナ禍以後、新卒で入社してからずっとオンラインワーク中心で、上司とも対面であまりまともに話したこともないという若手の「セルフブラック化」という言葉があります。
働き方改革以降、各社コンプライアンスにも非常に気を使うようになったことから、会社が急激に「ホワイト化」していると言われます。そのゆるふわ職場に成長の可能性を感じなくなった人が、自ら「ブラック」な環境や成長を求めて辞めていく流れが起こっています。
これはおそらく、ミドル・シニアの世代にはない価値観と流れで、逆に若手のほうが「セルフブラック化しないとやばい」「こんなゆるふわなところにいると、実力がつかない」と感じているのだろうと黒田さんは指摘します。
小杉さんはこの点について、人的資本経営でも頻出する「エンゲージメントスコア」「ウェルビーイング」とも通じると話しています。
この若手が職場について感じているであろう感覚について、ミドル世代はもっと強く意識したほうが良いでしょう。
エンゲージメントは低いがウェルビーイングが高くてハッピーだというような組織状態があります。これはかつて「ぬるま湯」と言われた組織ですが、両方高いのが理想的で、両方低いのがブラックだと言われてきました。
「エンゲージメントがやたら高くてウェルビーイングが低いと、<燃え尽き症候群>になると言われたんですけれど。それってけっこう昔の世代の話で、今の若い世代は“ぬるま湯でいることが不安だ”というのがあるかなと思います」(小杉さん)
パワハラに対する「行き過ぎたケア」
昨今では上司がパワハラに対する行き過ぎたケアをしていて、部下に何も言えない、叱れないことによって、逆に部下としては成長を感じられないということも多くあります。
昔が良かったとは言いませんが、今はとかく部下に物申しにくい。友人、知人やクライアントのマネジメントの皆さんと話したり会食したりしていても、「部下を飲みに誘いにくい」という話はよく出ます。この辺りについてのストレスも多いんじゃなかろうかということは、ミドル・シニア世代の皆さんに対して思います。
理想の上司として挙げられる監督に栗山英樹さん、森保一さんがいます。
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