第32回:若手にはないミドル・シニアの強みを活かすには?:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
自らがどんな付加価値を生んで、どんな稼ぐ力を身に付けたいのか。方向が決まったら、それに対して必要なスキルは何かを考えてみてほしい。
非常に優しくて受け止めてくれて、選手の<やりたい>を軸にコーチしてくれます。時代を象徴し、大きな結果も残した素晴らしい監督たちです。スポーツ界の監督像を見ていると、その時々の時代の反映がありますね。
素敵な監督ですが、黒田さんは一方では、「好きにしていいよ」って言われるけど、選手(部下)がどうしたらいいかわ分からないという場面もあることを指摘しました。
自由にやらせてほしいけれども、一方では上から明確な指示が欲しい。このあたりが今、ミドル・シニア世代を悩ませている部下たちとの関わり方のさじ加減かと思います。
ミドル・シニアを苦しめる、求められる付加価値の変化
1996年に金融ビッグバンが起きて、10年後の2008年にリーマンショック、その前の1991年にバブル崩壊がありました。この30〜40年の流れで言うと、90年代後半から日本経済の基盤がぐらつき始めました。金融ビッグバンや山一證券廃業の頃から、終身雇用の崩壊がいよいよ現実味を帯びて、「失われた30年」となり、そうこうしているうちに労働力が激減してきました。
産業の栄枯盛衰も変わってきていて、製造業からインターネットやサービス業に主役がスイッチする流れがありました。そんな中で、例えば今40代〜50代は、この産業の変わり目のあおりを受けている可能性がすごく高いです。
これまで必要とされていた付加価値と、これから求められる付加価値のギャップに挟まれて苦しんでいるミドル・シニアが多くいます。その構造の中で、小杉さんが10年前に書いた『起業家のように企業で働く 企業で働くにも「起業家」マインドは必須の時代!』の中で言っていたようなコンセプトが、今必要になってきています。
「雇われる力」を高めなければならないという刷り込み
黒田さんは、「先ほどのリスキリングという言葉もそうなんですけど、一番悪いのは“雇われる力(エンプロイアビリティ)”と言われているもの。これがものすごく自己肯定感を下げると感じます」と指摘します。
確かに、これはミドル・シニア世代のみならず若手も含めて、「雇われる力」を高めねばならないと刷り込まれてる人が非常に多くいます。
しかし本来は、自らがどんな付加価値を生んで、どんな稼ぐ力を身に付けたいのか。その主題が先にあって、「こういう方向で稼いでいきたい」と決まったら、「それに対して必要なスキルは何か」を決めていくべきです。
「求められるスキルは何か」ではなくて、「自分はどうありたいのか」を先に決める順番に切り替えましょう。
仕事に活かせるスキルを決める手順としては、まず自分がどう生きたいか、どう稼ぐ力をつけたいかを決めることからスタートしたほうが、結果として身に付けるべきスキルが見つかりやすくなるでしょう。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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