第31回:高付加価値経営は、こうして実現される!:マネジメント力を科学する
キーエンス流の付加価値創造を自社に導入するには、「売って、使って、そしてお客さまの役に立つ」、ここまでを一気通貫で全社員に理解させること。
第27回:キーエンス流・少数精鋭で高付加価値を生む「潜在ニーズに気付く力」の鍛え方
第28回:キーエンス流「価値ある商品」を創り出す組織構造とは
第29回:営業利益率50%のキーエンスに学ぶ組織作り&サービス作りの在り方
第30回:キーエンス出身者が明かす、高業績セールスパーソンと低業績セールスパーソンの大きな違い
エグゼクティブの皆さんが活躍する際に発揮するマネジメント能力にスポットを当て、「いかなるときに、どのような力が求められるか」について明らかにしていく当連載。
高付加価値経営や生産性の高い組織開発をどのように実現するかについて、ベストセラー『付加価値のつくりかた/一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』の著者、カクシン代表取締役CEOの田尻望さんと当連載筆者の経営者JP代表・井上との対談の内容からお届けする第3回です。(2023年11月16日(木)開催「経営者力診断スペシャルトークライブ:キーエンスに学ぶ!高付加価値経営はこうして実現する」)
高付加価値経営の適用しやすい業界・しにくい業界
キーエンス流の「高付加価値の作り方」ですが、それが適用しやすい業界としにくい業界はあるのだろうか。そんなことを思い、田尻さんに尋ねてみました。
田尻さん曰く、「できるだけ変数の多い業種」のほうが生産性が上がりやすいとのことです。
例えば人材業界ですと、派遣よりも人材紹介のほうが生産性を上げる可能性が高い。通常、人材紹介業の皆さんはスキルや経験のような表面的なニーズ(いわゆるスペック)を聞いていることが一般的です。
「こんな人がいたら紹介してください」とクライアントから聞いて、「分かりました」と求人票を書くパターンですが、できる人材エージェントは、「そんな人材が欲しいんですね、分かりました」と表面的なもの(スペック)に関してはちゃんと受け止めた上で、「ちなみに、その人がいることによって御社は何を成したいんですか」と聞く。
「どんなプロジェクトを成していきたいのか」「どんな目標を成していきたいのか」という部分こそを聞く。その中に本当のニーズがあります。これを田尻さんは「裏のニーズ」と呼んでいます。
“顧客の要望通り”が最適解とは限らない
このようにして、「ニーズ」「裏のニーズ」「背景」の3つをきっちりと切り分けることで、高付加価値の糸口が見えてきます。
実際、筆者・井上の経営する経営者JPのエグゼクティブサーチ事業(経営層・幹部層の人材紹介)では、「裏のニーズ」「背景」、その幹部求人の大元のテーマや課題を聞くことで、結果として最初にクライアントから預かった話(求人)そのものではない人材を紹介することは日常茶飯事です。
CFOが欲しいという依頼であったものが、大元のニーズや課題からクライアントと話し合った結果、「COOを採用するほうがいいんじゃないか」ということで採用に至ったりしています。
ちまたでよく、「当社独占案件」「エクスクルーシブ」とかをうたう人材エージェントを見かけます。
大概の場合、そのエージェントが言っているのは、「他のエージェントには依頼を出しておらず、当社だけが依頼を受けている案件があります」ということを言っているのですが、本当に独占性のある案件(求人)とは、実は上記のように、そもそも求人として設定されている「表のニーズ」ではなく、突き詰めたところで明らかになった「裏のニーズ」をつかみ、動いているエージェントが持っているものなのです。
キーエンスが顧客に徹底的に入り込み、寄り添い、独自のソリューションを見つけ出し作って納品しているのと同じですね。正直、このような動きをしている人材エージェントはほとんどないと思います。なので、この「裏のニーズ」で動ける人材エージェントは希少で、高付加価値を産むことができるのです。
キーエンス流、高付加価値創造はどこから来た?
キーエンスの付加価値創造提供の考え方はさまざまな理論の複合技から成っていると田尻さんは言います。
「キーエンスはやはり僕のイメージで言うと独自かなと思います。何が独自かと言うと、確かに海外の理論から見てみたら、類似しているところはいっぱいあるんですけど、たぶんここまで詳細に仕組みを作って、動かして、時間を守り、情報を守り、細かくやれているのは日本独自。それで、日本独自×海外のマーケティング理論であったりとか、創業者は海外で学んだと聞いているので、たぶん海外理論もあると思うんですけれども。これを複合してできているのは、キーエンスだけなんじゃないかなと思います」(田尻さん)
キーエンス流の付加価値創造を自社に導入するには、「売って、使って、そしてお客さまの役に立つ」、ここまでを一気通貫で全社員に理解させることだと田尻さんは解説します。
そうなれば、自分がマーケティングにいようと営業にいようと開発にいようと、全部動かせるようになる。そのためにも、数値化で全社の共通言語、共通認識を作ることが欠かせないのです。
高付加価値経営を導入するための各処説得術?!
「“お客さまが欲しいって言っているんだから、これを作りましょうよ”と。“売れたら自分の人事評価制度が上がる”って言ってみんなが動くわけですよ。売れなかったら最悪ですけど、お客さまが買うのが分かっていたとしたら、みんなの評価が上がりますから。それを糧にして(組織を)動かすことができます」(田尻さん)
田尻さんは、大企業に対しては、人事などの導入担当者には「人事評価が上がりますよ」、経営者には「儲かりますよ」、現場の人には「今より楽になりますよ」と、マネジャーには「マネジメントが楽になりますよ」と言いながらキーエンス流の導入コンサルティングの提案をおこなっているそうです(笑)。
「私のような外部のこんなに小さい会社でも、何万人もいる会社にコンサルティングができるのは、すべての人たちに対してのWin-WinーWin-WinーWin-WinーWinを考えて、それを一気通貫にする。ということを想像できる人が、たぶん社内に少ないいのではないでしょうか。もしもできるようであれば、ぜひコンサルティングセールスなどでお役に立てればなと思っています」(田尻さん)
御社でキーエンス流の高付加価値経営を導入されたいと考えているのであれば、ぜひ田尻さんに相談してみてください。
もし、「裏のニーズ」をとらまえた、御社の事業・組織・経営にとって真に望ましい幹部の採用を成功させたいなら、経営者JPに相談してください。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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