日本企業が世界のビジネス市場で復活するには「愛ある」ビジネスアナリシスによるDX推進が必須――IIBA 日本支部 寺嶋一郎代表理事:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)
日本企業のDXはなぜ進まないのか。デジタルツールを導入しただけではDXは進まない。DXで何をやるべきかを明確にすることが必要であり、そのためにはビジネスアナリストの存在が不可欠となる。
「いま必要なDX人材とは、まさにビジネスアナリストです。エンジニアやAIの専門家、データサイエンティストなどを採用しても、何をするかをだれが決めるのでしょうか。何をするかを決められるのがビジネスアナリストです。ビジネスアナリストが、何をやるかを決めれば、あとはアウトソースしてもかまいません。現在はローコード/ノーコード開発で、誰でも開発することができ、実装フェーズの合理化、簡略化も進んでいます。だからこそ何を実装するかという上流工程がより一層重要になります」(寺嶋氏)。
ビジネスアナリストに必要なのは、知識、技術、スキル、そして“人間力”
ビジネスアナリシス人材のいる会社は、ITの導入がスムーズに行われ、何をすべきかを明確にできる。つまりビジネスアナリシス人材こそがDX人材にほかならない。今後、AIの進化により、ますますビジネスアナリシスの役割が重要になる。IT人材がビジネスアナリシスを勉強し、ITとビジネスをつないでDX推進をリードし、将来はCIOやCDOを目指すことになるだろう。
ビジネスアナリストに必要なスキルは、以下の3つである。
(1)ビジネスアナリシスに関するスキル
ビジネスモデルやビジネスプロセスなどを客観的、論理的に分析したり、適切な戦略や課題解決策を見つけ出したりするスキル
(2)適用分野の業務とプロセスに関するスキル
必ずしも実務経験がいるわけではないが、少なくとも業界構造や業務の用語、業務プロセスなどを理解している必要がある
(3)一般的なマネジメントスキル
さまざまな人とコミュニケーションを図り、それぞれの利害関係を調整しつつプロジェクトを率いていくスキル
「重要なのがソフトスキルで、いろいろな人との交渉や仲介、伝達などのコミュニケーションスキルが必要になります。ソフトスキルを支える力は、知識、技術、スキルだけでなく、この人が言うことなら聞こうと思わせる“人間力”です。人間力とは、儒教の礼(覇道ではなく王道、品性が大事)、智(経験から裏打ちされた知、発想力、創造性)、信(部下からの信頼)、義(判断力、決断力)、勇(実践力)の5つの徳目で、それを支える愛の心が“仁”です」(寺嶋氏)
人間力において愛は非常に重要で、お互いに尊敬しあうこと、助けあうこと、生かしあうこと、分かちあうこと、許しあうことで、愛とは自ずから利他の行為を伴い、実は利他こそが自らも幸せにする。一方、愛の反対は無関心で、自分さえよければいいということだ。
寺嶋氏は、「1日の始まりを感謝で満たし、まずはあなたから愛の実践をスタートしてください。ビジネスの場は素晴らしい学びの場で、実践者が増えれば愛は循環し、ビジネスの場はどんどんよくなります。デジタル化では欧米に負けてしまいましたが、今後のリアルとデジタルが融合する世界では製造業の強みを持つ日本にもチャンスはあります。愛のあるビジネスアナリシスで、日本企業の復活を目指しましょう」と講演を終えた。
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