「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏:セキュリティリーダーの視座(1/2 ページ)
LayerXのCISO兼VPoEを務める星北斗氏の歩みと哲学。前職での技術トップや海外組織の立ち上げを経て現職へ。「CISOは事業を加速させる経営者である」と説き、AI時代のセキュリティ構築を主導する。一行のログの先にあるユーザーを思う、裏方としての矜持に迫った。
LayerXで執行役員 CISO 兼 バクラク事業VPoEを務める星 北斗氏は、急速に成長するスタートアップにおいて、セキュリティとエンジニアリング組織の両輪をけん引するキーパーソンだ。
「CISOは第一に経営者であり、事業を加速させるドライバーであるべきだ」と語る星氏。
AI対応が求められる時勢の中で「攻めのインフラ戦略」を描く同氏の言葉の裏には、泥臭く手を動かし続けた原体験があった。
学生時代のスタートアップ参画、言葉の壁とも戦ったグローバル組織の立ち上げ、そして今も胸に刻む「裏方としての矜持」――星氏が歩んできたキャリアに迫る。
星 北斗(HOSHI hokuto)
――株式会社LayerX 執行役員 CISO 兼 バクラク事業VPoE
学生時代にセキュリティエンジニアのアルバイト、スタートアップ参画を経験した後、2013年にクックパッドへ新卒入社。自ら手を動かしてセキュリティとWebインフラ領域を横断的にけん引し、技術本部長に就任する。その後はイギリス駐在でのグローバルな情報システム・セキュリティ組織の立ち上げを指揮し、同社のCTO兼CISOを務めた。2024年1月にLayerXへ参画。現在は執行役員CISO兼バクラク事業VPoEとして、経営視点でセキュリティとエンジニアリング組織の両輪をけん引しながら、AIエージェント時代における新たなセキュリティ基盤の構築も主導している。
「すごい成果を裏から支えたい」――公務員志望からスタートアップへ
──現在、LayerXでCISOやVPoEとしてご活躍されていますが、もともとITの道を目指していたのでしょうか?
星氏: いえ、実は大学に入る頃には国家公務員になりたいと思っていたんです。法学部に進んで情報法などを学びたいと考えていました。
ただ、中学時代からプログラミングを始め、高校生になる頃にはサーバやネットワークの領域が好きになり、その流れで慶應義塾大学 SFCに進みました。
大学に入ってからは、研究しながらスタートアップ企業でアルバイトをしていたので、その頃にはITの世界に浸かっていましたね。
──どういう経緯で、インフラやセキュリティにのめり込んでいったのでしょうか?
星氏: 自分の根底には、「クリエイティブなことがあまり得意ではない」という、ちょっとしたコンプレックスがあるんです。「自分が表立って何かを作る」というよりは、「誰かがすごい成果を上げるのを裏から支える」という性分なんですよね。
例えば、学生時代に、学生スタートアップに参画し、大学生のための授業管理アプリに携わっていたことがありました。そこで私はシステムインフラを運用していました。手探りながらもサービスをリリースし、社会の課題を解決していく経験を積んだのがこの分野にのめり込む出発点の一つになっています。
「自分でやるしかない」――アドバイザーで終わる悔しさから技術トップへ
──その後、前職のクックパッドに入社したのですね。
星氏: クックパッドには、大学在学中の2010年からセキュリティを担当するアルバイトとして働き始めた後、さきほどのスタートアップへ参画し、大学院修了後の2013年に新卒として入社しました。
当時の「セキュリティ」は今ほどメジャーな分野ではなく、特にユーザー企業における専門家が少ない領域でした。私自身も正直、手探りで進んでいった部分があります。
実際に担当してみると、いきなり大きな壁にぶつかりました。Webインフラの深い仕組みが分かっていないと、現場に対して「こう変更した方がいいと思います」としか言えず、ただのアドバイザーのような立場になってしまうんです。
──「アドバイザー」とは、決定権・実行権がなかったということでしょうか。
星氏: そうですね。アルバイトながらセキュリティ担当として働かせてもらいましたが、実環境を変えていけるほどのスキルがまだなく、実際の改修は実装・運用を担当する他のエンジニアにお願いしたり、助けていただくことが非常に多かったです。優先度の兼ね合いで、「対応されるのを待つ」ケースが少なくなかったです。
「自分で進められるようにならなければダメだ」と思い立ち、そこから自ら手を動かしてWebインフラの運用にも入り込みました。ネットワークやサーバ、セキュリティを横断的に見ながら現場のインフラ業務に飛び込んでいきました。
──IT全般が分からなければ、セキュリティはできませんよね。
星氏: はい。自分でできることが増えた結果、ありがたいことに徐々に任せてもらえる領域が広がり、2016年には社内ITを含めたインフラ全体の責任者である「インフラ部長」に、2019年には会社全体の技術基盤領域を所管する「技術本部長」に就任しました。
「誰かを支えたい」という思いと、「現場を動かせない悔しさ」からWebインフラに飛び込みましたが、結果的にそれが自分のキャリアを大きく広げてくれたと思っています。
言葉と価値観の壁を越えた、イギリス駐在でのグローバル組織立ち上げ
──そこまでの実績を積まれた後、2020年からはイギリスへ駐在されます。当時のエピソードを教えてください。
星氏: 2020年の10月から約2年半、ロンドンの南西にあるブリストルという街に駐在していました。海外70カ国以上へ事業を展開しており、そのヘッドクオーター(海外本社)がイギリスに置かれています。そこで情報システム部門のグローバル化や、セキュリティチームの立ち上げを社長直轄で進めていました。
──グローバルな環境での組織づくりは、日本とは勝手が違いましたか?
星氏: 違いましたね。自分のチームの半分は外国人、半分は日本人という構成で、他にも多様な国籍や価値観を持ったメンバーが集まっていました。エンジニアだけでなく、コミュニティマネージャーやオフィスチームも巻き込んで組織を作っていく必要がありました。
私自身、もともと英語が得意というわけではありませんでした。それでも、グローバルな環境で「どう仕事を進めるか」「どうプロダクトを作っていくか」について議論を重ねました。「みんな、よくついてきてくれたな」と感謝の気持ちでいっぱいです。帰国後はCTO兼CISOを1年ほど務めました。
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