ソリューションベンダーでありながら、自らがユーザーとなり大規模なエンタープライズクラウド活用を実践するNEC。グループ全体の業務プロセスの平準化に加えて、基幹システムの統合を図り、データセンターで集中運用を行うことで、大幅な業務効率化とTCO削減を実現した。こうしたノウハウは他社の課題解決にも応用できるという。
クラウド実証リポート「ザ・プロに聞く」 INDEX |
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【第1回】 業務プロセス改革編 NEC 執行役員 龍野康次郎氏 | |
【第2回】 ITシステム改革編 NEC 執行役員 富山卓二氏 |
経営システム改革の一環として、ITシステム改革を推進しているNEC。その注目ポイントは、グループ各社15万人を支える基幹システムをデータセンターに統合したエンタープライズクラウド活用だ。いま話題のクラウドを自ら大規模システムとして活用するNECの取り組みを、ITシステム改革の責任者の一人である富山卓二執行役員 兼 OMCS事業本部長に聞いた。
──クラウドに対する企業の注目度は?
富山 ITシステムのコスト削減や新規事業の早期立ち上げ、コア業務への集中化などを実現する手段として、いま多くの企業でクラウド活用が注目されています。しかし一方で、機能や可用性など自社で構築したシステムと同等の品質を保持できるか、自社システムとの混在環境においてサービス運用時のトラブル対応はどこまで任せられるのかなどが、課題として取り上げられています。
現在NECでは、グループ全体にわたる経営システム改革の一環として推進しているITシステム改革で、自らを利用者とする大規模なエンタープライズクラウド活用に取り組んでいます。この経験を生かしてユーザーとソリューションベンダーという2つの視点からさまざまな課題をクリアして、お客さまにも信頼いただける最適なクラウド活用の実現を目指しています。
──経営システム改革におけるITシステム改革の必要性は?
富山 企業経営は、人とITシステムが同調しながら動くことにより活性化します。つまり経営システムにおいて、業務プロセスとITシステムは、一対の関係にあるわけです。今回の経営システム改革の実践にあたりNECは、まずグループ全体の業務プロセスを標準化して1つに統合しました。
これに対応して業務プロセスを支えるITシステムでも改革を実施し、両改革によってグループ各社の基幹システムを1つにまとめ、統合化を図りました。
──基幹システムを統合する理由とその目的は何ですか?
富山 グループ各社がこれまで独自に構築、活用してきた個別最適のシステムは、コストや運用面で「分割損」が生じていました。統合により基幹システムをシンプル化することで分割損をなくし、コストや運用の最適化を図ることが最大の狙いです。グループ各社における販売、購買、経理などの基幹領域は、生産システムや顧客管理システムなどに比べ標準化しやすい業務であることも、統合に踏み切った大きな理由です。
新たなシステムには、ワールドワイドで実績があるSAP社のERP(統合業務パッケージ)を採用して標準化を図ることで、これまで個々に手づくりしてきたアプリケーション開発などもなくしました。グループ全体の基幹システム統合を図り、データセンターで集中運用を行うことで、約20%のTCO削減を見込んでいます。
──基幹システム統合におけるポイントは?
富山 グループ約15万人を支える大規模基幹システムを、WindowsとSQL Serverによって構築したのも大きな特長です。このニュースは、各方面から注目を集め、その実現性や可用性についてさまざまなお客さまから驚きの声も上がりました。しかし、NECには揺るぎない自信がありました。その理由は、オープンミッションクリティカルシステム(OMCS)構築における確かな実績です。1995年、メインフレームに代わる新たな基幹システム構築手段として、オープンテクノロジーに着目したNECは、高度なSI力によってUNIXをベースにメインフレームに匹敵する高可用性と、数百台規模の拡張性を実現しました。
コストを抑えながら、すぐれた可用性を発揮するNECのOMCS技術は、社会インフラとして決して止まることを許されない通信分野や金融分野にも高く評価され、基幹システム構築でこれまで多くの実績を培ってきました。こうした技術をベースに、NECではシステム設計、構築、および評価の方法論を着実に確立していくことで、高度なSIノウハウを築き上げてきました。
また基幹システムの統合化では、SIerとして各製品の信頼度や完成度を高めることも重要です。今回のNECのITシステム改革では、マイクロソフト社などと緊密な連携を図りながら、さまざまな課題をクリアし、高い堅牢性と低コストを同時に実現しています。今回統合を行わなかった既存システムとの接続、連携もすでに済ませ、今後は大規模基幹システムをクラウド化するための移行手順など、新たなノウハウも自らの経験を通して蓄積していきます。
──クラウド活用におけるNECの強みとは?
富山 コンサルティング、製品、運用サポートなどを並列的に体系化しただけでは、真のエンタープライズクラウドは実現できません。そこに足りないのは、それらをつなげて高度に連携させるSI力です。上流のコンサルティングから、先進のIT/ネットワーク製品、プラットフォーム基盤、運用までのすべてのレイヤをカバーするソリューションを、SIによってトータルに提供してきたNECだからこそ、真のクラウドサービスパートナーとして信頼いただけると自負しています。
そして、何といっても業務プロセスとITシステムの両輪にわたる改革で裏づけられた具体的なノウハウを生かし、自信をもってお客さまを支援できることも大きな強みです。
──NECが具体的に提供するサービスモデルとは何ですか?
富山 NECではクラウド指向サービスプラットフォームソリューションとして、具体的に3種類のサービスモデルをお客さまに提供します。
第1は、短期間に低コストで導入できるSaaS(ソフトウェアをサービスとして提供)型のサービスモデルです。共通的なフロント系アプリケーションから、業種特有の業務アプリケーションまで、SaaSサービスとして幅広い業種に提供いたします。プラットフォーム資産を所有することなく、お客さまはニーズに適したサービスを選択してご利用いただけます。
第2は、共同センター型サービスモデルです。プラットフォームやアプリケーションなど、同一業種の複数のお客さまが共同で利用するための環境づくりをNECがトータルにお手伝いします。この共同センター型のサービスモデルは、金融やメディア、製造業などの分野で、活用が期待されています。
第3は、個別対応型のサービスモデルです。今回のNECの経営システム改革と同様に、基幹システム再構築の際に業務プロセスの標準化を併せて行い、統一されたプラットフォーム上にシステムを順次移行します。ITリソースの管理から運用まで、すべてNECのデータセンターがサポートいたします。もちろんお客さまのデータセンターを強化して、運用管理をNECがサポートすることも可能です。
手軽なサービス活用から、大規模なエンタープライズクラウド活用まで、NECはお客さまの課題やニーズに合わせて最適なソリューションをお届けできます。
──今後の強化ポイントについて教えてください。
富山 最先端の高密度技術や仮想化技術、省エネ技術を取り入れてデータセンターの基盤強化に力を注いでいきます。また、自動化ツールの強化などにより、一人の担当者が従来より一けた上の台数のサーバを集中管理するなど、運用の効率化を図りながら、運用サービスの高品質化とコスト削減も追求します。
加えて、お客様のさまざまなニーズに迅速に対応すべく、ネットワーク上のデータの流れを柔軟に制御できる先進のIT/ネットワーク融合技術の開発も進めています。さらには、バックアップデータセンターによる事業の継続性の確保や、企業のワールドワイドな事業を支援するデータセンターの充実など、お客さまのデータセンター活用を幅広く支援いたします。
──クラウド活用の実践によってお客さまに何を伝えたいですか?
富山 信頼性にすぐれ、しかも柔軟で利便性の高いクラウド活用を実現するには、高度なITとネットワーク技術が不可欠です。NECには、自らのクラウド活用に基づくあらゆるノウハウが揃っています。クラウド活用は、いまや「雲をつかむ」ような話ではありません。実践力こそ、実現力です。
NECでは今後、自らが行った基幹システム統合やSaaSサービスのデモをご紹介してまいります。まずは11月5日より開催いたします「C&Cユーザフォーラム&iEXPO2009」にて、ぜひご体感下さい。
※本記事は、日本電気より提供された記事を許諾を得て再構成したものです。
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提供:日本電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2009年10月31日