次世代ICTインフラの姿とは――ミャンマーの金融プロジェクトから学ぶ

大和総研のミャンマー金融ICTインフラ構築プロジェクトを率いた伊藤慶昭氏を講師に招き、「ミャンマープロジェクトに学ぶ、次世代ITインフラストラクチャーの条件」と題した勉強会が開催された。ミャンマーの特殊な環境下でのICTインフラ構築プロジェクトの過程で、次世代のICTインフラの姿が浮かび上がってきたという。

» 2015年06月22日 10時00分 公開
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 2015年5月29日、ITmediaエグゼクティブ編集部主催の勉強会「ミャンマープロジェクトに学ぶ、次世代ITインフラストラクチャーの条件」が開催された。ミャンマーにおいて90年代から、証券・金融システムのインフラ構築支援を積極的に手掛けてきたのが、大和総研だ。現在では、証券会社と証券取引所のシステム、そしてミャンマー中央銀行のシステムを標準化されたICT基盤上に集約して運用管理するプロジェクトが進行中で、2015年3月にはデータセンター基盤が本格稼働を開始したばかりだ。

 このプロジェクトを率いた大和総研 フロンティアテクノロジー推進部長 伊藤慶昭氏にミャンマーにおけるビジネスやICT市場の現況、さらには今回のプロジェクトにおいて特に重要な役割を果たしたICT技術などについて話してもらった。

ミャンマープロジェクトから学ぶ「今後のICTインフラの在り方」

大和総研 フロンティアテクノロジー推進部長 伊藤慶昭氏

このプロジェクトはミャンマーが抱えるさまざまな特殊事情が絡み、試行錯誤の連続だったという。

 「ミャンマーのICT成熟度はASEAN諸国の中でも最低レベルで、インフラも脆弱なら人材も少なく、特にインフラ系の技術者は絶対的に不足している。また欧米のICTベンダーの現地法人も少なく、国外の代理店から製品や保守を調達せざるを得ない状況だ。とにかく、ヒト・モノ・カネともに不足している中でどうやってICTインフラを構築するか、徹底的に考えた」(伊藤氏)

 こうした状況下で同社が選択したのが、「コンテナ型データセンターの設置」という手段だった。既存のICTインフラが極めて貧弱な中、先進国と同水準のマシンルーム環境を限られた予算とリソースで決められた期間内に構築するには、最新のデータセンター環境が既にモジュールの形でパッケージングされたコンテナ型データセンターをシンガポールで構築し、それをそのまま持ってきて現地に設置するという方式がスピードも速く効率がいいとの判断だった。

 このデータセンター上にICTインフラをすべて集約させ、一括して管理する。その際、現地エンジニアの限られたマンパワーとスキルでも運用がきちんと回せるよう、ハードウェアの種類をなるべく少なくしたり、OSやミドルウェアの構成も極力標準化することにした。

現在でも現地の事情に合わせ、その運用効率をさらに高めるべくさまざまな検討を重ねており、そのなかのひとつとして次世代の新たなICTインフラの導入考えているところだという。当初は、サーバ機器とストレージ機器をSANで接続する一般的なアーキテクチャを採用していたが、これをよりシンプルで柔軟性の高い構成にすべく、ストレージ機器を廃してサーバだけの構成にすることを検討している。

 「ストレージ機器にはディスク障害が付き物で、かつストレージ専門のエンジニアを確保する必要もある。しかしヴイエムウェアのVirtual SAN (VSAN)を使えば、サーバの内蔵ディスクだけで本格的な共有ストレージ環境を構築できる。またSSDをサーバに搭載すれば、HDD故障の対応からも解放される。キャパシティの拡張も、サーバ筐体の追加だけで簡単に行えるので、ヒト・モノ・カネともに絶対的に不足しているミャンマーの環境には、適したアーキテクチャではないかと考えている」(伊藤氏)

次世代のICTインフラに求められる要件とは?

日本ヒューレット・パッカード HPサーバ製品統括本部 エンタープライズサーバビジネス開発部 部長 中井大士氏

 伊藤氏が言うような「ストレージ装置不要」「サーバ追加のみで拡張可能」なICTインフラは、現時点ではどこまで可能になっているのだろうか? その一例として、日本ヒューレット・パッカード HPサーバ製品統括本部 エンタープライズサーバビジネス開発部 部長 中井大士氏より、同社が提供するソリューションの紹介が行われた。

 中井氏は、これまでのデータセンターインフラの進化を「多段化、階層化、分断の歴史」と表現する。

 「メインフレーム、クライアント/サーバ、Webアプリケーションと、時代を追うごとにデータセンターを構成するコンポーネントは多様化・多階層化を続けてきた。こうした複雑なアーキテクチャにメリットがないわけではないが、今後のインフラの在り方を考える際には、根本的に構成をシンプルにして、これまで多くの時間やリソースが割かれてきた運用管理業務をスリム化する必要がある」(中井氏)

 同時に、今後のICTインフラには「俊敏性」も求められる。いくら優れたインフラでも、設計から構築、テストまでに半年もかかっていては、ようやく稼働を開始したときには、当初計画していたビジネスモデルはもう時代遅れになっている可能性もある。

 さらに、今日のICTインフラは極めて多様なワークロードに対応していかなくてはならない。かつての、メインフレーム1台に最適化すればよかった時代から、クライアント/サーバ、Webアプリケーションと、インフラ上で稼働するコンポーネントの数や種類は年々増え、さらに今日ではモバイルやビッグデータ、クラウドなど、カバーすべきワークロードは実に多岐に渡っている。

 しかし往々にして、「俊敏性」と「多様なワークロードへの対応」とは相反する要件になる。同様に、リソースを迅速かつ低コストで調達できるパブリッククラウドと、堅牢性やセキュリティ、柔軟なカスタマイズ性に優れるオンプレミス/プライベートクラウドも、互いに相反する特徴を持つものと見られている。中井氏は、この両者のメリットをいかに両立させていくかが、今後のエンタープライズICT基盤に求められる要件だと指摘する。

 「エンタープライズICTの基盤には決して欠かすことができないセキュリティや堅牢性、柔軟なカスタマイズ性を担保しつつ、パブリッククラウド並みのスピードと経済性を手に入れるにはどうすればいいのか。このジレンマをいかに解消するかが今後のICTインフラ技術に課せられた課題であり、HPが今まさに力を入れて取り組んでいるソリューションでもある」(中井氏)

次世代インフラの構築に最適な「コンバージドインフラ」という新たな選択肢

 こうした課題を解決するためにHPが開発・提供しているのが、「HP ConvergedSystem」だ。この製品は、近年高い注目を集めている「コンバージドインフラ」と呼ばれる製品ジャンルに属すものである。コンバージドインフラとは、ベンダーがあらかじめ評価・検証を行ったハードウェア/ソフトウェア構成をパッケージングしてアプライアンス製品として提供する製品形態のことを指し、従来のように各ハードウェア/ソフトウェア製品を個別に選定・調達したり、互いの相性を検証する必要がないため、安定性の高いインフラを迅速に手に入れることができる。

 ちなみにHP ConvergedSystemは、顧客のニーズに応じて2種類のモデルがラインアップされている。100以上の仮想サーバをホストする中〜大規模インフラでの利用を前提とした「HP ConvergedSystem 700 v2.0」と、100以下の仮想サーバや250以下の仮想デスクトップをカバーする小〜中規模向け製品「HP ConvergedSystem 200-HC EVO:RAIL」の2つだ。特に後者は、HPとヴイエムウェアとの密接な協業の下に生まれた、今注目の製品だ。

 2Uの筐体の中に4台分のサーバモジュールが入っており、これだけでサーバとしての機能はもとより、本来なら外付けストレージ装置をSANで接続しなければ実現できない共有ストレージ機能までをも内包している。これを可能にしているのが「VSAN」と呼ばれるヴイエムウェアの最新の技術だ。各サーバモジュールに内蔵されているHDDとSDDを論理的に束ね、単一の共有ストレージとして利用できるようにする先進技術だ。

 これにより、これまでサーバ/SANスイッチ/ストレージの階層構造で実現していたアーキテクチャを、1台の筐体の中だけで完結させているのだ。さらに、これらすべてのコンポーネントを、同じ管理ツールを使って一元的に管理できるため、導入や運用に掛かる手間も大幅に削減できる。中井氏によれば「ラックに設置して結線し、電源を投入した後は、簡単セットアップツールで最低限の設定さえ施せば、ほぼ自動的に環境が構築される。早ければ15分程度でセットアップを終えることができる」という。システムを拡張する際も、筐体を追加すれば自動的に新たなリソースがクラスタに組み込まれ、スケールアウトが実現する。

 同製品は現在、サーバ仮想化の基盤として、あるいは仮想デスクトップの基盤としてさまざまな企業で導入が進んでいるが、特に冒頭で紹介したミャンマーの事例のような仮想プライベートクラウド基盤の構成要素として採用される例が増えているという。

 「"俊敏性"と"シンプル化"を高いレベルで両立できる新たなアーキテクチャを備えたインフラ製品として、ヴイエムウェアとの共同開発で生まれたHP ConvergedSystem 200-HC EVO:RAILは、今後のICTインフラを考えていく上で極めて魅力的な選択肢だと自負している。ぜひ導入を検討していただければ幸いだ」(中井氏)

 企業を取り巻く環境の変化はますます激しく、スピード感をもって臨まなくては、取り残されてしまう。ビジネスの屋台骨となる情報システムには一層の俊敏性とシンプル化、柔軟性が求められるのは当然である。これら実現するには何が必要か、新しい選択肢を考える必要があるのではないだろうか。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社、ヴイエムウェア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2015年7月21日

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