テクノロジの進化とともに、働き方も変化している。ITの活用により、場所や時間の制約なく働くことができる環境を実現することで、企業競争力の強化やガバナンスの確立につながる。
6月4日「第15回 ITmedia Executive Round Table」が開催された。大和総研、大和総研ビジネス・イノベーションの代表取締役副社長である鈴木孝一氏、米デルのクラウド・クライアント・コンピューティング マーケティング担当上級ディレクター&上級戦略責任者(CSO)であるジェフ・マクノート(Jeff McNaught)氏、およびラウンドテーブル参加者が「デスクトップ仮想化、その真の恩恵とは?」をテーマにディスカッションを繰り広げた。
基調講演に登場した鈴木氏は、デスクトップ仮想化を導入した大和総研の事例について紹介。「日本では部門最適で業務の効率化にITを活用してきたが、海外では全体最適で業務の標準化にITを活用している。デスクトップ仮想化の本質はデジタル化を推進すること。リアルでアナログな業務をデジタル化することで、いつでも、どこでも、誰でもIT活用の恩恵を得ることができ、全社的なガバナンスも確立できる」と話した。
ITは確かに便利だが、漠然とただ受け身で導入するだけでは役に立たない、というのが鈴木氏の持論。自社のビジネスが置かれている状況に照らし合わせて長期戦略を立案し、その考えを積極的にITベンダーにもぶつけるべきだと話す。
鈴木氏の講演を受け登壇したジェフ・マクノート氏は、デルが推進する「クラウド・クライアント・コンピューティング」について紹介した。クラウド・クライアント・コンピューティングとは、VDI(仮想デスクトップインフラストラクチャー)テクノロジを活用することで、誰でも、どこでも、どんなデバイスからでもデスクトップ環境やアプリケーションをセキュアに利用可能にするデルが推し進めるデスクトップ仮想化ソリューションである。
クラウド・クライアント・コンピューティングを実現することで、期待できる効果は「ITリソースの最適化」「セキュリティの強化」「業務の効率化」「コスト削減」の大きく4つ。まず、シンクライアント端末でアプリケーションを利用するためには、アプリケーションやストレージ、メモリなどをサーバ環境ですべてを管理しなければならないことからITリソースを最適化することができる。
またサーバ上でITリソースを管理することで、データの保護、災害復旧、ポリシー適用、法令遵守、リスク監視などが容易になるほか、シンクライアント上にデータが残ることがなく、ウイルスの攻撃も防げることからセキュリティの強化が可能。セキュリティが強化されることで、在宅勤務や個人所有のデバイスを利用するBYOD(Bring Your Own Device)による業務の効率化が可能になり、全社的にコスト削減が期待できる。
「デスクトップ仮想化は、特に新しい考え方ではない。1995年にWyse TechnologyとCitrix Systemsが共同で"Winterm"と呼ばれるシンクライアント/シンサーバーシステムを開発した。当初はコンセプトレベルだったが、現在ではテクノロジとして習熟している。シンクライアント端末の累積出荷台数は2000万台、利用者数は2億人を超え、金融、医療、政府機関など、幅広い分野で利用されている」(マクノート氏)
デルは2012年4月にWyseを買収し、Wyseのテクノロジを積極的に活用。Wyse端末、ゼロクライアント、クラウドデスクトップなどの「クラウドクライアント」はもちろん、ITリソースを最適化する「データセンターコンポーネント」から、各種仮想化ソフトウェアで構成される「デスクトップ仮想化ソリューション」、豊富な実績でデスクトップ仮想化の実現を支援する「サービス」まで、完全なソリューションを提供している。
「デルは、25ユーザーから20万ユーザーまで、あらゆる規模、あらゆる業界に対応したVDIを構築した実績がある。クラウド・クライアント・コンピューティングというビジョンを実現するためのプランニングから構築、運用までをいかに支援するかがデルのミッション。データセンターからソフトウェア、クライアント、サービスまで、包括的に提供できるのはデルだけだ」(マクノート氏)
日本企業は、広範囲にITをビジネスに活用しているが、本質的にはデジタルなITをアナログ的に導入している事例が多いが、今後はよりデジタル的にITを活用し、デジタル統制をより効果的に効かせることが必要になるのではないだろうか。
アナログ的なIT活用か、完全なデジタル化かということは、IT視点では、自由か、統制かのトレードオフになる。しかし経営視点では、デジタル統制が不可欠といえる。それでは、参加者の会社におけるIT活用は、アナログ的なのか、デジタル的なのか? 標準化されているのか、されていないのか? それにより統制が効いているのか、いないのかについてディスカッションが展開された。
「IT化は進んでいるが、ビジネスはアナログ的」というのが参加企業の多くの回答である。機械的な部分はデジタル化されているが、それ以外はきわめてアナログ的という。デジタル化されたITだけで顧客対応ができるのは理想だが、顧客によってはカスタマイズが不可欠であり、アナログ的に対応せざるを得ないのが実情である。情報改革のハードルが高く、システムの変革が難しい中、アナログとデジタルのバランスが重要になる。
こうした状況で、デスクトップ仮想化に対する期待も大きい。デスクトップ仮想化の導入により、子育てや介護のために有能な社員が会社を辞めることなく在宅勤務が可能になる。また次々と登場する新種のウイルスや標的型攻撃にも対応できる。こうした企業の取り組みは、社会的評価にもつながる。新しいテクノロジを導入するためには、人の育成やガバナンスの確立が必須だが、恐れることなく、走りながら考えることも重要という。
その一方で、「業務効率化やセキュリティ強化、コスト削減につながるというがピンとこない」「経営視点からすると変化の激しいIT環境の長期戦略は本当に立案できるのか疑問」「シンクライアントがメジャーになると今度はPCのように攻撃の対象のなるのでは?」「導入を検討したが、使えないアプリケーションや周辺機器があり挫折した」というデスクトップ仮想化に対する疑問の声も聞かれた。
こうした疑問にマクノート氏は、「これまでは、端末、ソフトウェア、サーバなど複数のベンダーが関わっていたため、システムが複雑になり、VDIの初期導入コストが増大しがちであった。以前は、1ユーザーあたり2200ドル程度(※注)必要だったが、現在は1ユーザーあたり400ドル程度(※注)で導入できるソリューションもデルは提供している。2015年秋に日本でも提供を予定している"Wyse vWorkspace"を使えば1ユーザーあたりのVDI単価をさらに劇的に安く構築することが可能になる。(※注:価格はUSでの参考価格)」と答える。
「デスクトップ仮想化がピンとこないために導入を躊躇している企業もあったが、米国の小売業では、Wyse端末を14万台導入し、POSやオフィスなどで活用することで販売業務を大幅に効率化している企業もある。またセキュリティ面では、米国の大手銀行は、1日あたり約1万件の攻撃をWyse端末で防いでいるという事例もある」(マクノート氏)
最後にマクノート氏は、「クラウド・クライアント・コンピューティングは、これまでのデスクトップ仮想化の概念を打ち破り、信頼性とセキュリティを担保し、企業の価値を最大化させる完全なエンド・ツー・エンドのデスクトップ仮想化ソリューションといえる。これほど従来のクライアント端末のあり方を変革した仕組みはないと確信している」と語り、ディスカッションを締めくくった。
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提供:デル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2015年7月28日